第16話
バスは渋谷からの帰路をゆっくりと進めていた。窓の外を流れる街の光が、二人の横顔を淡く照らす。瑞川は視線を窓に落としながら、小さなため息とともに話し始めた。
「恋愛って、お互いの温度が大事だと思う。片方が冷めてたら、もう片方の熱を吸収しちゃうじゃない。だから結局、同じくらいの温度になっちゃう。でも、あまりにも低すぎたら、二人とも寒い……それって、いつか、私達の終わりってことだと思う……」
河香葉は瑞川の言葉を受け止めながら、膝の上で手を組み直し、ゆっくりと微笑んだ。「そうね。でも、私が彼女らしいことをすれば、二人の温度は上がるんじゃない。あなたのS的な行動は確かに動的だけど、力学で言えば摩擦熱みたいなもの。お互いが少しすり減っちゃうこともあるけど、でも……」
瑞川はくすりと笑い、肩越しに河香葉を見た。「じゃあ、私たちの関係をグラフィックアートに例えるなら、どういう感じ?」
河香葉は窓の外に目をやりながら答えた。「……ニューヨークのモニュメントで、'I love New York' って。あれみたいに、お互いの中に'ラブ'っていう単語がある限り、関係は続く。」
瑞川は少し首を傾げ、挑発するように言った。「それって、つまり河香葉は私の下僕ってことでいい?」
河香葉は一瞬、目を見開いたあと、ふっと柔らかい笑みを浮かべる。「できれば……」
バスのエンジン音が二人の間を満たす中、河香葉は小さな声で付け加えた。「彼女でいいのかな?」
瑞川はその言葉を聞いて、窓の向こうの街の光を一緒に見つめる。そして互いに無言で微笑み合うのだった。
彼女でいいのかな? 紙の妖精さん @paperfairy
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