第3話

昼休みのベルが鳴ると、河香葉はゆっくりと教室の窓際の席を離れた。カバンを抱えながら階段を上る途中、頭の中で考えていたのは、今日、の瑞川の「遊ぶぞ!」の予告だった。


屋上に着くと、瑞川はすでに来ていて、窓際に置かれたカバンから制服のブレザーを脱ぎ、私服に着替えていた。背中に軽くかけた髪の束が風に揺れる。普段はおとなしい彼女の動きとは思えないほどの軽やかさだった。


「もう、準備できたよ。遊びに行こ!」瑞川は振り返ると、にっこり笑った。けれどもその笑顔には、どこか挑発的な光が混ざっていた。


河香葉は思った。なぜ自分はこんな子と一緒にいるんだろう。でも、考え方はわかる。勉強は人生を楽しむための手段でしかない。人生を楽しむために、目いっぱい遊ぶ。この子はそういう人だ。


瑞川は屋上の鉄柵越しに外の街並みを睨む。

河香葉はぐっと目を細め、ポケットに手を入れる。今日もこの子に振り回されるのか、と半ばあきらめ半分で覚悟した。


屋上の空気は少しひんやりしていた。昼の光が二人の影を長く引き伸ばす。


「準備はいいね?」瑞川の声が響く。

「…あ、うん、ちょ待ち」河香葉は小さく言う。

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