第2話


 地下牢に入ると話し声が聞こえて来た。


 賈詡かくはやれやれ、という顔をする。

 歩いて行くと、陸議りくぎ司馬孚しばふが通路の地べたに仲良く座っていて、軍医から借りた薬草辞典を徐庶じょしょに読んでやってるようだった。

 見かけの特徴やら、どういう風に煎じるといいのか、どこに咲くのかなど、徐庶は牢の中にいたが三人で話している。


「お前ら、牢ってのはな。反省するために入る所なんだよ。

 だからこんな寒くてネズミもいるような汚いとこなんだ。

 楽しくおしゃべりをするな。どんだけ仲いいんだ」


 賈詡がやって来ると、慌てて司馬孚と陸議が立ち上がる。

 見張りの兵も二人いたが、三人の話を一緒になって聞いて笑っていた。


 まったく。


「す、すみません。仰る通りです。すぐ部屋に戻ります」


 賈詡は溜息をついた。


「もういい。徐庶。司馬懿殿しばいと俺と、郭嘉かくかとの話し合いで、お前を処罰するのは止めた。 陸議を牢に入れたのは黄巌こうがんに加えお前も見失ったからだが、お前は帰って来た。

 蜀に行きたいのなら、ここに自分で戻って来るはずが無い。

 よって魏軍に反意はないと見て、牢から出してやる。

 謹慎も解く。

 その代わり新しい仕事を頼むから、俺の部屋に来い」


 賈詡は見張りに視線をやった。

 見張りが牢の鍵を開ける。

 徐庶が出て来ると、陸議と司馬孚しばふは安堵した表情になった。


「ほら。君たちもそんなところに立ってないで部屋に帰りな。

 別に今更徐庶を痛めつけたりしない」


 そういうわけでは無かったのだが賈詡に言われて、陸議と司馬孚は揃って賈詡に向かい深く頭を下げた。

 それから歩き出して陸議が徐庶の方を見ると、徐庶が安心させるように小さく笑いかけてくれた。

 陸議は頷き、徐庶にも頭を下げてから地下牢を後にした。


 賈詡は徐庶を連れ、自分の執務室に向かった。



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