サバイバル

「竹をこう割って、組んで……ほら、屋根ができるだろ」

「すごい……ほんとに、何でもできるのね」

翌朝、蓮は木の枝とヤシの葉を使って、シェルターの骨組みを作り始めていた。私は言われるまま、葉を運んだり、紐代わりのツルを結んだり。慣れない手つきに苦戦しながらも、少しずつ“生きる”ことに向き合いはじめていた。

「ただの趣味だけどな。サバイバルとか、アウトドアとか好きで。こういうの、わくわくするんだよ」

「……私とは正反対」

葵は、都会で生きることに慣れすぎていた。すべてが整った世界で、上司の顔色をうかがいながら数字を追いかける毎日。気づけば、自分の“好き”すらわからなくなっていた。

「でも……なんか、体を動かしてると変なこと考えなくて済むね」

「それ、めっちゃわかる」

蓮が笑った。昨日まで無口だった彼の笑顔が、少しずつ自然に見えてきた。

昼過ぎ、魚をとるために浅瀬に網を仕掛けた。器用な蓮が編んだ簡易トラップに、見事に一匹かかっていた。

「すごっ! 漁師みたい!」

「だろ?」

焚き火で焼いたその魚は、塩も何もないのに、信じられないくらい美味しかった。無言で頬張る私を見て、蓮が小さく笑った。

「ちゃんと、生きてるじゃん」

「……うん」

本当だ。昨日とはまるで違う。汗も、泥も、なぜか心地よい。

ここが無人島で、助けがいつ来るかもわからなくて、明日どうなるかも知らない。

けれど、

少しだけ“生きる”ことに前向きになれている自分が、確かにそこにいた。

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