グリノワール
アント
第1話 アルベールの森
アルベールの高原を抜け、霧のかかった森を3マイルほど歩いたところにのどかな村があるらしい。
そこは不思議な場所で、とある放浪者が言うにはあの村に行くことは出来ても帰ることはできない。
実際、教会の調査員も派遣されたのだが4人が行方不明、2人は昏睡状態、1人は無事に帰って来たが何も覚えてようだった。
そのためその森及び村は禁足地として恐れられ1460年以来50年以上人が近づくことは無かった。
「……なんで俺がこんなところに行かなくちゃいけないんだ?」
馬車に揺られて丸二日、流石の彼も限界に達していた。
「アルフレート、こんな仕事を引き受けてくれる人は、あなた位なんですよ。実際、調査員の被害もあったらしいですし」
「そんな危ない場所なら別に調べる必要は無いじゃないか、俺はまだ死にたくないよ」
「それがこの森自体が禁足地になっているせいで、隣の都市まで行くのに3日以上はかかるんですよ。だから調査して安全であることを確認してほしいんだ」
溜め息をついて、ニヤリと笑い
「じゃあ、この仕事終わったらお前のおごりで飲みに行くぞ!」
冗談めいた声で軽口を叩いた。
「またですか……まあ、いいですよ。あなたにはお世話になってるんで」
微笑んでそう答える。
嬉しくなり、アルフレートは小さくガッツポーズをした。
アルベール高原を抜けた先、丘を超えると全体に霧がかった森が見えてくる。
ガタンッ。
突然馬車が馬を止めた。
「あ~こりゃダメだな、完全に馬がビビってる」
彼は馬車を降りて、森へ歩いて行く。
「じゃあ約束通り1週間後ここに集合な、あと何かあったら伝達魔法で連絡するからよろしく」
「わかりました、ではお気をつけて!」
互いに別れを告げ、それぞれの目的地ヘ出発するのだった。
──森に近づくにつれて何とも言えない寒気と微量な魔力を感じる。
これは教会が敵対視している堕天使がいる雰囲気に近いものがあった。
この霧が奴の能力によるものだとすると無策に入るのは余りにも危険過ぎるが、ここで引き下がる訳にはいかない。
深呼吸を1回2回と繰り返し、中に入っていった。
森の中は雑草が生い茂っていてここにあったであろう道をふさいでしまっている。何十年前までは普通に使われていたのだろう。
草をかき分けながら進んでいくと、石のタイルで作られている道が姿を現した。
先ほどとは違い、劣化が少なくあまり年月が経っていないように見える。
さらに奥へ進むと霧が濃くなり、それと同時に何か懐かしいものを感じる。
虫取り網を持って森中を駆け回る思い出。両親がいない時、夜中にかくれんぼをした思い出。
そんな幼少期にありもしない記憶がぐるぐると頭の中を回っている。
これは攻撃であり、いつもなら退却するところなのだが今の彼には出来なかった。
流れ込む記憶の数々、どのくらい歩いたのだろうか。いつしか歩みを止め、倒れこんでしまった。
道の奥から誰かがやってくる。
「……あっ、あの大丈夫ですか?」
目を覚ますと見知らぬ天井があった。
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