第2話 与太話
まず最初に、私は転生者であったことを伝えたい。しかし、この情報は忘れてもらって構わない。今まで隠し通してきたため、この本でくらいは打ち明けておきたかったのだ。少しだけ、私の与太話を聞いてほしい。
元の世界は文明が発達しており、とても便利だった。
魔法がなくても病気は治せるし、治せない病気の方が珍しいくらいだった。
会話さえも、インターネットと呼ばれるものを通して、世界中の人間とすることができた。それが大きな装置ではなく、片手に収まるほどの大きさの、スマートフォンという道具で実現できていた。この世界に来たことで、改めて、元の世界の技術力の高さに驚かされた。
素晴らしい世界だった。魔物も、魔王もいない。そんな、平和な世界…というわけではなかった。
文明は人間同士の殺し合いを起こした。今、この世界もその危機に瀕していることは、この本を手に取った君にも知っておいてほしい。
私が元いた世界は、効率良く人間を殺すために、多くの技術が発達していった。
例を挙げるのであれば、核爆弾というものである。
これはとてつもない破壊力を持つ爆発を引き起こし、多くの人間を、文字通り跡形もなく消し去った。また、爆発の起きた地の土壌は、まるで呪いをかけられたかのように汚染され、運良く生き延びた人間もまた、まるで呪いにかかったかのように死んでいった。
一つ、その呪いの例を挙げよう。これは私が実際に見たものではなく、聞いた話に過ぎないことは、先んじて告白しておく。
呪いを受けた人間は、皮膚がボロボロと零れ落ちていくのだ。まるで、枯れ葉が木から落ちていくみたいに。それに伴う苦痛は、想像を絶するだろう。実際、「痛い」「殺して」「死にたい」といった悲鳴があったと聞いている。
これが、文明が発達した世界で起こった、忘れてはならない悲劇である。このような悲劇を、この世界で起こしてはならない。もしも起きてしまえば、我々はなぜこの世界を救ったのか、分からなくなってしまうだろう。
私が耐えてきた尻の痛みを無駄にしないでほしいと、切に願っている。
英雄曰く Aoi人 @myonkyouzyu
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