言葉じゃなくて、そばにいること #5



朝の光が、鏡のような湖面にちらちらと反射し、野花がそよ風に揺れていた。


ふたりの暮らしは、少しずつこの静かな湖畔に馴染んでいった。


出会ってから、まだ約一週間。


それでも、ふたりの間には確かなリズムが生まれていた。





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焚き火の痕が地面に黒く残り、木で作った箱の中には干した実や葉が整理されて並んでいる。


小さな草が芽吹く草原の上には、ふたりが安心して眠れるように整えられた寝床が広がっていた。


主にネコサウルスが食料を調達し、


トカゲくんがそれを調理し、長く保存する方法を編み出していた。


トカゲくんの狩りは、音を立てずに行う静かな技術だった。


香りの強い草や干した果皮を地面に置いて虫や小動物を誘い、忍び寄って器用な両手でぴたりと捕まえる。


一方、ネコサウルスはその速さと野生で鍛えられた筋力を活かし、小動物や地中に隠れた生き物を俊敏に仕留めていった。


ある日、狩りから戻ってきたネコサウルスは、しっぽをぱたぱたと揺らしながら嬉しそうに言った。



「トカゲくんのため……いっぱいとれた」



狩りは、ただの食料集めではなかった。


ネコサウルスにとってそれは、大切な誰かのために走る時間だったのだ。


そのお陰だろうか。トカゲくんの尻尾も、ゆっくりと、だが確実に再生していった。


ネコサウルスは毎朝、それをじっと確認するのが習慣になっていた。


しゃがみ込んで尻尾に顔を近づけ、じっと見つめながらつぶやく。



「……もうちょっと」



目標があることが、こんなにも生きる力になるなんて。


ネコサウルスは、生きる意味をもらったように感じていた。




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湖のほとりで、トカゲくんが小枝に糸を結びつけた即席の釣り道具を手にしていた。


餌を結んだ糸が湖面に垂れ、静かな水に小さな波紋が広がる。


そっと近づいてきたネコサウルスが、不思議そうに尋ねた。



「なに、してる?」



トカゲくんは水面を見つめながら答えた。



「釣り!魚を捕まえようとしてるんだ」



ネコサウルスは首をかしげる。



「みず、入ってつかまえる方がはやい」



トカゲくんは笑った。



「ふふ、これは待つ遊びなんだよ。おもしろいんだ」



風の音と鳥の声だけが広がる静かな時間。


やがて、トカゲくんの持つ枝がピクッと動いた。



「きた……!」



小さな魚が、水面からきらきらと跳ね上がった。


その光景に、ネコサウルスは目を丸くする。



「きらきら……」


「ね?すごいでしょ!」



魚を見つめながら、トカゲくんはうれしそうに笑った。



「これ、食べてみる?」



トカゲくんが問いかけると、ネコサウルスは少しだけ首を横に振り、穏やかに言った。



「トカゲくん、たくさんたべて。もっとげんきになる」



猫サウルスの言葉に、トカゲくんは目を輝かせて言った。



「えぇ、これ、めっちゃ美味しいんだけどね。……ほんとに、ぼくが食べていいの?」



ネコサウルスは、少しだけ考えるようにまばたきをしてから、静かに頷いた。



「ありがとう……じゃ、いただきますっ!」





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トカゲくんが小さな魚を食べ終わったそのとき、ネコサウルスはふいに立ち上がると、湖の水辺へと歩いていった。



「どうしたの?」



トカゲくんが不思議そうに声をかけると、ネコサウルスはしゃがみ込み、水面をじっと見つめ始めた。


その目の奥に、狩りの獣の光が宿る。


流れ、距離、逃げ道。


すべてを計算したその一瞬。



「ズバッ」



湖面が切り裂かれる音が響き、ネコサウルスの前足が水中へと閃いた。


数秒後、大きな魚をくわえたネコサウルスが、ゆっくりと顔を水から上げた。


口元から水滴が垂れ、目は少し誇らしげだった。



「トカゲくん。これでおいしいごはんつくって」



トカゲくんは目を輝かせながら言った。



「うわあ……!めっちゃ大きい!任せて、すっごく美味しくするね!」

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