迷える少女は恋をする
あぽちー
第1章 孤独なピエロは恋をする 第一幕
「類は友を呼ぶ」……気の合った者や似通った者は自然に寄り集まる。
これは、迷った少女たちの物語。
――――――――――――――――――――
ある日、学校から帰ろうと靴箱を開けた時、そこには一通の手紙が入っていた。
「…ラブレター?」
開けてみると
『どうしても伝えたいことがあります。屋上に来ていただけませんか?』
と、それだけ書かれていた。わざわざラブレターなんかで呼び出してくるなんて面倒くさい奴だ。まぁ流石に無視はこれを書いた人が可哀想だから一応屋上に向かう。屋上への扉を開けると…
「宮原さん…?」
「ありがとう、朝比奈さん。来てくれてよかった」
「あの手紙、宮原さんが書いたんだよね。どうしてこんなことをしたの?」
宮原さんはクラスでは人気者で、誰にでも優しいからすごくモテている。そんな人がどうして私を呼び出したのだろうか?てっきり呼び出したのは男子で、告白でもしてくるんじゃ無いかと思っていたのに。
「ごめんね、2人きりで話したいことがあったんだ」
そう言って彼女が微笑む。2人きりで話したいこととはなんだろうか。そもそもクラスではそんなに接点などない。彼女はクラスのカーストトップで、私はどこにでもいるような量産型女子だ。私なんかじゃ釣り合わない。
「ずっと朝比奈さんに伝えたいことがあったんだ」
彼女は顔を赤くしながら続ける。
「好きです!付き合ってください!」
……………………………………………………え゙!?
これは流石に予想外だ。告白された?しかも相手は宮原さん?一気にいろんなことが起きて頭がおかしくなりそうだ。しかも宮原さんはずっと顔を赤くしてもじもじしている。その姿は同性からしてみてもとても可愛く、魅力的に見えた。
だけど……答えはもう、決まっている。
私は勇気を出して伝える。
「ごめんなさい、あなたと付き合うことはできません」
「……どうして?」
「やっぱり女の子同士で付き合うのは変だから……?」
今にも泣き出しそうな顔で彼女は言う。
さすがにそんな顔をされると罪悪感で押しつぶされそうになる。
「そういうわけじゃないよ。私達ってお互いの事ほとんど知らないじゃん。それに……」
「誰とも付き合うつもりないんだ、私」
そう伝えると、彼女は……
すごく、泣いていた。
「なんで!どうして付き合ってくれないの!?わたしこんなにも朝比奈さんの事好きなのに!」
急に叫ばれてびっくりする。そっちがその気ならこっちだって言ってやる。
「だいたい私のどこが好きなの!?私達ほとんど話した事ないし!そもそも入学式からまだ一ヶ月しかだってないじゃん!」
「顔だよ!」
えぇ……
流石に困惑する。
「顔が大好きなんだよ!めっちゃタイプだったんだよ!わたし普通に男が好きだったのに!朝比奈さんをみた瞬間、女の子が好きな体にされちゃったんだよ!責任とってよ!!!」
「私悪くないじゃん!!!」
本当に悪くないじゃん、私…
「……朝比奈さんって面白いね」
「急になに?」
面白いくらい突然に話題が変わる。
「今まではなんかクールって感じだったけど、こうして話してると思ったよりも元気な子だったから。もっと好きになっちゃった」
「私ってクールな人だと思われてたんだ…」
あまり人付き合いが好きじゃないからクラスでは同じグループの子としか喋ってなかったし、あんまり目立つようなことはしてなかったんだけど、そんなふうに思われていたのか。
「どうして恋人つくりたくないの?」
「それ教えないとダメ?」
「教えてくれないとここから帰さないよ」
「怖いこと言わないでよ…」
「じゃあ教えてくれる?」
「教えないよ、絶対に」
宮原さんには悪いけど、これだけは教えたくない。
「……そんなに教えたくないんだったら詮索はしないよ」
「そうしてくれると助かるよ」
「ただ、わたし朝比奈さんの事は絶対に諦めないからね!何がなんでもわたし無しじゃ生きていけないようにしてあげるから!」
――――――――――――――――――――
幕間 宮原春奈の話し その1
恋なんて今まで考えた事なかった。ずっと今を生きるので精一杯だったから。余計なことを言ってはいけない。周りに合わせなければいけない。そんなことばかり考えていた。わたしは表面上でしか人と仲良くできない。だから相手と深く関わらなければならない恋愛は絶対にできないだろうと思っていた。
けれど彼女、朝比奈ゆきを見た瞬間にそんな考えは消え去った。運命だと思った。一目惚れしてしまった。嬉しかった。こんな自分でも人を好きになれるんだとわかったから。……いつか彼女の隣に立ちたい。
こうして、1人の少女の恋物語が始まる。
――――――――――――――――――――
とても憂鬱だ…。昨日のことを考えると、特に。朝食もあまり喉を通らない。
「どうしたものかなぁ…」
すごく困った。告白をされるというのはとても嬉しい。それも、宮原さんというカーストトップの人からの告白だ。嬉しくないわけがない。しかも宮原さんかわいいし……。ただ、相手がどんなにいい人でも私は付き合うつもりは無い。絶対にだ。
「絶対諦めなさそうなこと言ってたからなぁ……」
わたし無しじゃ生きていけないようにするって一体何を私にするつもりなんだ。怖いんだが、普通に。しかし、そんなことを考える時間もなく……
「やべ!遅刻する!」
時計を見ると、針は普段家を出ている時間を大幅に過ぎていた。とにかく、今は学校に行くのを優先しよう。宮原さんも学校ではあまり目立つようなことはしてこないだろう。多分……。
チャイムが鳴り、放課後の始まりを知らせる。
何か忘れているような……。
あっ……!結局宮原さんから話しかけられてない……。いや!話しかけられたかったわけでは無いからね!昨日のこともあるからね。てっきり向こうから積極的に話しかけてくると思っていただけだ。
気づけば教室にはもう誰もいない。私も早く帰ろうとすると
「一緒に帰ろ!」
宮原さんが教室を覗きながら話しかけてきた。
「帰ったんじゃなかったの?」
気づいたら教室にいなかったし、もう帰ったかと思っていた。
「人が少なくなるのを待ってたんだよ。わたしが急に朝比奈さんに一緒に帰ろって言ったらみんな注目しちゃうと思って」
「えっそうだったの?」
めちゃくちゃ気を使ってくれるじゃん。正直嬉しい。あんまり目立つのは好きじゃ無いし。
「てことで一緒に帰ろ!」
「えぇ……。まぁその気遣いに免じて今日は一緒に帰ってあげるよ」
「やった!」
ほとんど人がいない廊下を、2人並んで歩き出す。普段は1人で帰っている道だが、この日はどこか心地よかった。
「そういえばさ」
「朝比奈さんってインスタとかやってないの?」
「……まぁ、やってはいるよ。めちゃくちゃしてるってわけじゃ無いけど」
SNSはあまり好きじゃ無い。自分は幸せですよって周りにアピールしてるみたいに感じるし。ただ、友達付き合いってのもあるし、当たり障りのないことのみ投稿してる程度だ。
「だったらさ、インスタ交換しよ!」
「まぁいいけど……」
なんかこの人に教えるの怖いな……
そう思いつつも自分のアカウントを教える。
そんなこんなで気づけば駅に着いていた。
「朝比奈さんって向こう側の電車なの?」
「そうだよ」
「そっか、私の家と真逆だ」
宮原さんは少し寂しそうな顔をする。
ちょうど私の乗る電車がやってきた。
「朝比奈さん、また明日」
そう言いながら彼女は手を振ってくる。
「……宮原さん、もし嫌じゃなければだけどさ」
「明日も一緒に帰らない?」
自分の顔が赤くなっていくのがわかる。
これで断られたら流石に恥ずかしいな。しかし彼女はそんな考えを杞憂だと言わんばかりに
「もちろんっ!」
そう、笑顔で返事をした。
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