幽霊くん!

@h4guki

本編(完結)

 夜中に喉が渇いて目を覚ましたら、枕元に幽霊がいた。

 幽霊って初めて見たけど、見た目だけならほとんど生きた人間と同じだ。プカプカと宙に浮いているし、あと本人自ら「俺は幽霊だ」と言ったので、まあ幽霊なんだろう。

 制服を着たその男は、俺と同い年くらいに見える。こういうのって、女が定番じゃねえの?紺色のブレザーがフワフワと揺れる。


「俺が言うことじゃないけどさ、すんなり受け入れすぎじゃない?」


 しかも、普通に喋るし。茶色のくせ毛にアホっぽい笑顔には、なんとなく親近感を覚えた。本当に怖くなさすぎる。


「ていうかごめん、誰?」

「えっ!?!?」


 オーバーリアクション。本当にただの男子高校生だ。大声を出して吹っ飛んだあと、へろへろと悲しげな表情になった。


「俺だよ?俺!俺!!」

「えっ?」


 本当に覚えていない。マジで誰だ?そもそも、最近誰かの葬式に参加した記憶もない。昔仲良かった奴らの顔を思い出してみる。小学校の頃転校したヨっちゃんは違うし、中学校の時よくゲームセンターで会った佐藤も違う。

 考え込んでいるうちに、ヒェ〜ンとかなんとか変な声をあげて、幽霊は泣き出した。


「え……ごめんて」


 可哀想なやつだな。多分死んだあとに会いに来るくらいには俺のことを好きだったのだろうが、あいにく俺には友達が多すぎる。本当に申し訳ないとは思うが、思い出せないことには仕方ないのだ。


「……マジで覚えてないの?」

「うん」

「即答!」

「まあ、覚えてないもんは仕方ないだろ」

「薄情者!」

「すまん」

「わぁーん!!」


 幽霊は部屋中をジタバタと飛び回ったり、たまに俺に顔を見せたりしている。騒がしいやつだな。


「俺明日朝練あるから寝るわ」

「嘘でしょ?幽霊いるのに?」


 まだわあわあと騒ぐ幽霊を無視して、俺は布団を被った。

 ああ眠い。なんだかぐっくり眠れそうだ。


――――――――――――――――――――――――


「俺のこと、覚えてもないんだね」


 本当はここに来るまで、俺にできるのかずっと不安だった。俺、そそっかしいってよくママに言われてたし。


「良かった」


 俺がなんで幽霊になったかわかる?幽霊になってもくっきりと残った首の跡。小学校で虐めにあって学校に行けなくなってから、ずっと苦しみ続けてきた。俺の人生、全部狂っちゃったよ。お前のせいだよ、全部。

 いくつかのトロフィーや賞状に見守られながら、柔らかいベッドの上で眠る彼を見つめる。


「おやすみ」


 人を呪わば穴二つ。地獄で会おうね。

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