第2話「妹、学校デビュー」

翌朝。

 いつもより少し早く起きた俺は、洗面所で鉢合わせた葵と気まずく挨拶を交わした。


「おはようございます……じゃなくて、おはよう、でいいんですよね?」


「……ああ、おはよう」


 ぎこちない。まだ完全に兄妹になった実感がない。

 それでも一緒に朝ごはんを食べ、一緒に家を出ると、なんだか不思議な気分になる。


 学校に着くと、案の定、クラスがざわついた。


「おいおい、なんだあの子、天城(あまぎ)の隣にいるの妹か?」


「可愛いじゃん。紹介しろよ!」


 クラスメイトの冷やかしに、葵は顔を真っ赤にしてぺこぺこ頭を下げる。

 俺はため息をついて、「転校生だから仲良くしてやれ」と言うしかなかった。


 昼休み、廊下で葵を見かける。女子たちに囲まれて、少し緊張した顔で笑っていた。


(ちゃんとやってるんだな)


 そう思うと、なぜか胸があたたかくなる。

 放課後、一緒に帰るとき、葵が小さくつぶやいた。


「お兄ちゃんのおかげで、少し友達できました」


「……別に俺は何もしてないだろ」


「でも、紹介してくれてうれしかったです」


 そう言って笑う葵。

 昨日よりも距離が近づいた気がして、思わず視線をそらした。

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