第24話 高津柊奈は妹を守りたい


〚柊奈視点で話が始まります〛


私と杏子ちゃんは、私の部屋で並んで座っていた

最初はぎこちなかったけれど、杏子ちゃんが私のスマホを覗き込みながら


「……ひなさん、文字打つの早いね」


と感心したように言ってくれたおかげで、空気はすぐに柔らかくなった

杏子ちゃんも文字を書きながらお喋りしてくれる


『ふふ、慣れだよ。杏子ちゃんの字もかわいいよ』


「ほんと?えへへ……」


杏子ちゃんは照れながら、遠慮がちに私の服の袖をつまむ

小さな子どもみたいなその仕草に、私の胸はじんわり温かくなった


『ねぇ、杏子ちゃん、私のこと、“お姉ちゃん”って呼んでいいからね?』


「……呼んでいいの?」


『もちろん!むしろ呼んでほしい!』


「……お姉ちゃん」


その一言に、私は思わず抱きつきそうになってしまった。

けど杏子が「くるしいのはイヤ」と言っていたのを思い出して

ギリギリのところで理性が止めた


『えへへ……うれし……』


温かい空気。

そこで空気をぶち壊すように

部屋に突然“ひんやり”した気配が流れ込んできた。


【おい】 「おい」


仁ちゃんの声も同時にした。


「柊奈、何やってんだ貴様」


【妹だろうがなんだろうが、距離が近すぎではないか】


『え!?な、なにー!?二人とも嫉妬してるの!?』


【し、嫉妬などしていない!ただ……近いぞ】


「貴様、女には誰にでも同じ対応なのか?」


幽霊さんと仁ちゃんのダブルの責め。

私は思わず笑ってしまったけど


『杏子ちゃんは妹です!守りたいの!』


「……柊奈は誰にでも優しすぎんじゃ」


【私にも、あんな顔をしたことはないだろう】


『だって……杏子ちゃんかわいいんだもん!』


「かわいい……?わしもかわいいが?」


【私は……まぁいい。だが、あまり近づきすぎるな】


完全に嫉妬してるな〜

幽霊さんは半透明のまま、ふわっと部屋の上を漂って

杏子ちゃんをじーっと観察している。


「……お姉ちゃん、この人たち誰?」


『えっと、友達、かな……?』


【妙に濁したな】


『いや説明難しいじゃん!』


杏子は首をかしげつつも、柊奈の腕にしがみついた

その瞬間――


【……………………(殺気)】

「…………(無表情で威圧)」


空気が一気に氷点下

そして私は、心の底からこう思った


(あ、これ杏子ちゃん気に入られてないなぁ……)




一方その頃。

夜宵(やよい)は薄暗いアパートの前で無線機に向かった。


『対象を確認。今から踏み込む』


「了解、増援向かわせる」


パタン。

夜宵はドアを蹴り破った。


「高津剛二(たかつごうじ)!児童相談所からの通報と、事情聴取への非協力で任意同行だ!」


「な、なんだ急に!」


「娘の証言はすべて確認済みだよ。君、家で何やってたか説明できるか?」


「……っ!」


剛二は逃げようとしたが、夜宵に手首を捻り上げられて床に押し付けられる。


「大人しくしな、父親面したゴミが」


そのまま手錠がかけられた。


「未来ある子どもに迷惑かけた代償は重いぞ?」


夜宵は淡々と、しかしどこか憂いのある目で男を連行した。



〚柊奈視点〛

夜。私の部屋にこの前の警察さんが来た

杏子ちゃんと私に向かって穏やかに言った


「もう大丈夫。お父さんはしばらく出てこれないよ」


その言葉に

喜びというよりは安心が勝った

私も杏子ちゃんも小さく呼吸を吐いた。


「……そっか」


「よかったね、杏子っち、でも今日からどうする?」

琴音が尋ねると、


「……お姉ちゃんの家にいたい」


その言葉に、私は胸がぎゅっと熱くなった。


『もちろん!来ていいよ!今日からここが杏子ちゃんの家!』


杏子はほっと笑って、柊奈の手を握った。


……その瞬間。


【おい】


「ひな、わしらの立場は?」


『もーー!二人とも杏子ちゃんにやさしくしてよ!』


幽霊さんと仁ちゃんは渋い顔をしながら、

しかしどこか負けたように視線を逸らす。


【……まぁ、妹なら……仕方ない】

「……まあ、妹ならよいか」


『許可出たぁぁ!!』


柊奈が飛び跳ねた瞬間。

杏子が袖を引っぱる

私は優しく頭を撫でて、

声は出ないけど全力の笑顔で伝えた


『うん。今日からずっと一緒だよ』


部屋の空気がふわっと温かくなる。

幽霊さんも仁ちゃんも、文句を言いながらも

どこか安心した顔をしていた。


こうして、わたしは本当の意味で“家族”を手に入れたのだった




〚作者からひとこと〛

本当に更新待たせてすみませんでした

完結させる気ではいるので、頑張って更新していきます……!

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声をなくした私と驚かせたい幽霊さん達のハーレム同居生活 六道 傑 @Rokudou

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