14 ごく普通の男たちの会話

 市川に佐藤の話を伝えただけなのに、どうして今〇ックに来てるんだろう。俺は。

 一応はなびたちは今日チアの練習をするからまだ時間あるけど、なぜか不安を感じてしまう。最近はずっと一緒に帰ったからさ、今こうやってみんなと話しているのをバレたらきっと怒られるんだろうな。


 その時、ラインが来る。


(はなび) 家でじっとしてね、練習が終わったらすぐそっち行く!

(湊) はい……。


 怖い。


「あははっ、いくらなんでもそんな風に告白をする人いるのか? バカじゃね?」

「でもぉ、なんか! 今しないとダメって気がしてさ」


 てか、人が増えた。市川の隣に座っている人は同じクラスの中山旭なかやまあさひ

 俺たちは失恋した市川を励ますためにバーガーを食べている。

 よく分からないけど、バーガーを食べている。


「旭! 俺はさ……。頑張ったぞ?」

「そう、颯太は頑張った。結果が悪かっただけ。だよな? 青柳」

「ああ、うん。そうだな」

「ああ、青柳は望月といい感じだから羨ましい! 俺も、俺も! 彼女欲しいんだよぉ。薔薇色だ! 薔薇色の高校生活を楽しみたい!」

「ええ、今も十分楽しいじゃん」

「旭! 彼女持ちのお前は黙れ! くっそ、なんで俺だけ!」

「あははっ」


 中山とはあまり話したことないけど、声も顔もいい人だ。いわゆるイケメン。

 それに彼女がいるのを話す前まで女子たちにめっちゃ声をかけれたからさ。そんなやつが友達なのに、どうして市川はすぐ告白をしたんだろう。俺より中山の方がもっと役に立つと思うけど、どうやら中山には相談してないようだな。


「ああ……」


 てか、いつまで泣き言を言うつもりだ。市川……。


「そうだ、青柳はさ。いつも女子たちと一緒にいるけど、どうして友達を作らないんだ?」

「なぜだろうな、よく分からない。うん、よく分からない」

「そうか、よかったら友達にならない? 俺も友達って呼べる人颯太しかいないからさ」

「いいよ、よろしく」

「うん! いいね。俺ずっと友達になりたかったけど、なんか見えない壁があったっていうか、近づかないでってオーラが感じられてさ。あはははっ」

「そうか、どうやって友達を作ればいいのか分からなかったから」

「そっか」

「あっ、青柳と旭二人の世界を作っている」

「ちげぇよ」

「あはっ、俺ちょっとトイレ!」

「はいはい」


 そして中山と二人きりになった俺は静かにバーガーを食べていた。

 バーガーは二年ぶりだな。一人の時はこういうところあまり来ないし、はなびと一緒にいる時はほとんど甘いものだし、あるいは直接ご飯を作るからさ。友達とこんなところに来るのもいいことだと思う。


 でも、どうしてさっきからじっと俺の方を見ているんだろうな。中山。


「勘違いだったら謝るけど、俺たち似ているような気がする」

「どういう意味?」

「カッコいいし、モテモテだし、そしてところかな?」

「カッコよくてモテる人は中山だ。素直になれないはどういう意味なのか分からないけど、何かあったのか? 中山」

「そう見える?」

「勘違いだったら謝るけど、ここに来てからずっと作り笑いをしているような気がしてさ」

「ふーん、鋭いな」


 中山はなんっていうか、本当に人気者って感じだった。

 多分、ほとんどの男たちがこういう人に憧れていると思う。

 カッコいいし、面白いし、彼女もいるからさ。その彼女を俺は見たことないけど、クラスメイトたちは可愛いって言ったから、誰もが欲しがる人生だ。なのに、どうしてあんな顔をしているんだろうな。


「俺、やっぱり湊のこと好きかも?」

「えっ?」

「えっ!? 旭って、バ、バイだったのか!?」

「人聞きの悪いこと言うな。友達としてだ。颯太には分からないことを、湊なら分かってくれそうな気がしてさ」

「そうか」

「えっ!?」

「声大きいよ、市川」

「ふーん。俺、いい友達ができたかも。ありがとう、颯太」

「いや、言っておくけど、青柳には好きな人いるからダメだぞ?」

「何を言ってるんだ……。彼女いるから、そんなことするわけないだろ。てか、俺たち男だぞ?」

「えへっ」


 その時、はなびからラインが来た。


(はなび) 今どこ?

(はなび) 今どこ?

(はなび) 今どこ?

(はなび) 今どこ?

(はなび) 今どこ?


 やばい、どうやらはなびの練習が終わったみたいだ。

 ここからうちまで時間がけっこうかかるけど、スーパーに行ってきたって言えば多分理解してくれると思う。今日はうちで一緒にご飯を食べる予定だから、今から急いで帰れば間に合うかもしれない。


 急がないと。


「じゃあ、俺先に行くから」

「あっ、青柳!」

「うん?」


 隣に置いたスクールバッグを持った時、俺は後ろから感じられる凄まじいオーラに気づいた。見たくなかったけど、見てしまった。どうしてここにいるのか分からない。後ろにはなびがいた。


 固唾を飲む。


「どうしてここにいるの〜? 湊くん」


 そのまま持っていたスマホを落としてしまう。手が震えていた。


「はなび! えっと、バーガー食べる?」


 と、バカみたいなことまで言い出して。完璧だな、俺。


「今日は一緒に夕飯作ろうって言ったでしょ? どうして先にバーガーを食べてるの?」

「そ、それは!」

「私は頑張ってチアの練習をしていたのに……、湊くんはこんなことろで友達と遊んでいたの?」


 顔は笑っているけど、声がめっちゃ怖い。

 俺の頭に手を乗せた時、ゾッとした。


「すみません……」

「じゃあ、みんな先に行くね」

「あっ、うん」

「湊、面白いな」

「また明日……」


 頬をつねられた俺はそのままみんなと挨拶をする。

 情けないけど、はなびは俺より上だからさ。あの時も今も……。


「てか、あの二人本当に付き合ってないのか? 颯太」

「そうだよ、俺も最初は付き合ってると思ってたけど、まだ付き合ってないって」

「ふーん、そうなんだ」

「いいやつだろ? 青柳」

「うん、俺は湊みたいな人嫌いじゃないから」

「やっぱり、旭はあっち———」


 ジュースを飲んでいた旭がさりげなく颯太の頭に手を乗せた。


「うっ! ウオォ……! 頭爆発する!」

「んなわけねぇだろ。ただ……、俺もあの二人みたいに幸せになりたかっただけ」

「何言ってるんだよ、不幸なのは俺だけだぞ?」

「だから、なんで仲良くなる前に告白したんだよ。まったく」

「そんなこと言わないで悲しいくなる……」


 ……


「お疲れ、はなび」

「ふん!」

「なんで怒ってるんだよぉ。俺、何もしてないけどぉ」

「私とはあんなところに行ってくれないじゃん。湊くんは……」

「あっ」


 そういえば、俺……はなびとあんなことしたことないよな。

 でも、友達に誘われたから仕方がなかった。あれは仕方がないことだった。

 と言ったら怒られるかもしれないな。そのまま黙っていた。


「じゃあ、体育祭が終わった後、一緒にどっか行く? もちろんはなびの好きなところ!」

「いいの?」

「うん。今日は……、市川が……。いや、いい」

「市川くん、失恋したよね?」

「知ってたんだ」

「見れば分かる。凪沙ちゃんに告白したって聞いたからね」

「ああ」


 で、俺……なんで睨まれているんだろう。怖いんだけどぉ。


「湊くんは最近私のことを大切にしてくれないような気がする」

「そ、そんなことないよ」


 大切にしなかったら望月さんに怒られるし、それがお母さんの耳に入ったら……。

 いや、あれは考えないようにしよう。


「イタタタッ!!! はなび……」


 また頬をつねられる。


「手!」

「あっ、うん。分かった」


 そのままさりげなく指を絡める俺たち、俺はこの瞬間が好きだ。

 手を繋ぐだけでめっちゃドキドキするからさ。

 そしてはなびもこれが好きだから俺に「手!」って言ったよな。ちらっと横顔を見ていた。可愛い。


「そうだ、買い物してないよね?」

「うん、まだ……」

「一緒に行こう! 私、湊くんと買い物するの好きだから」

「そうか、俺も」

「あっ、そうだ! 私、湊くんとやりたいことがある」

「何?」

「体育祭終わったら一緒にショッピングしよう! 可愛い洋服とか! 美味しい甘いものとか! 楽しみだね!」

「いいね。うん、分かった」


 そう言いながら俺たちは今夜のためにスーパーに寄る。


「そして前にも言ったけど、私と過ごす時間もっと増やして」

「はい……」

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