4 意識している②
知っている。俺は望月の幼馴染だから……、望月が可愛いってことはちゃんと知っている。それは小学生の頃から知っていることだった。なのに、俺はどうしてちらっと望月の方を見ているんだろう。
どうしてだ! なんでこんなに意識しているんだろう。
まるで変態みたいに望月の方を見ている自分に気づいた。
それにこないだ距離が急に縮んだような気がして、この状況をどう受け入れればいいのかよく分からない。
もしかして、よくあるイタズラかな? 中学生の頃に女子たちがよくそんなイタズラをしていたような気がする。
やっぱり、よく分からない。
「…………」
そして机に突っ伏している望月、その横顔をじっと見つめていた。
一度だけでもいいから望月の頬をつついてみたい。あのいちご大福みたいな頬を!
いけない、余計なこと考えるな。俺!
「さっきから何してんの? 青柳くん」
「えっ? 別に……、何も!」
「そう? ううっ———!」
昼休みが終わる五分前、望月があくびをしながら腕を伸ばしていた。
てか、俺のブレザーを着ている望月可愛すぎる。
そういえば中学一年生の頃にはさりげなく俺のシャツを着てたよな、そんなこともあったよな。懐かしい。
「てっきりエッチなこと考えてると思ってたのに、違ったんだ」
「俺のことをなんだと思ってるんだ? 望月さん」
「変態!」
「……次、体育だから準備しよう」
「体育!」
なんかテンション上がったような気がするけど、望月って体育好きだったっけ。
どうだろうな。
「ふふふっ♪」
なぜか俺を見てニヤニヤしている。怖いんだけど。
……
「青柳くん! 青柳くん! バドミントン教えて!」
「…………」
「どうしたの?」
ジャージーを取られた。
まさか、ジャージーまで借りるとは……。当たり前のことだけど、これも望月には大きいな。そして! 当たり前のことだけど! 俺のジャージーもすっごく似合う。可愛い。ブレザーを着た時もそうだったけど、男の保護本能をくすぐるような気がしてやばかった。
なんだ……、この小動物みたいな女の子は。守りたくなる。
「いや、なんでもない。いいよ、教えてあげる」
「やった! 凪沙ちゃんとすいちゃんはバドミントンあまり好きじゃないからね!」
「そうか?」
確かにあの二人は中学生の頃にも体育に興味なかったよな……。
てか、あのギャルたちとどうやって友達になったんだろう。望月は。
「いくね! えいっ!!!」
サーブをするだけなのに、気合い入れすぎじゃないのか?
てか、シャトルそのまま落ちたけどぉ。
「…………」
「あれ? シャトルが消えた!? 青柳くん! 消えたよ!?」
そう、思い出した。望月、スポーツ苦手だったよな。
そのまま精一杯笑いを我慢していた。
「下……」
「ああ! えへっ! 難しいね!」
「それより目を閉じてサーブするなよ……」
「そうなの? 全然気づいてなかった!」
「もう一回やろう」
「よっし! いくよ! えーいっ!」
だから、目閉じるなよぉ!!!!! 望月。
「あれ?」
「あれじゃねぇ! なんでサーブをするたびに目を閉じるんだよぉ!」
「だって! 難しいもん〜」
「あら、また夫婦喧嘩してるの? はなび」
「凪沙ちゃん! そ、そんなことないよ!」
「ふふっ、貸して! 私が見せてあげるから! 覚悟しなさいよ、青柳くん」
佐藤は意外とバドミントン上手いのか? こういうの興味ないと思ってたのに。
「お? うん」
「いっくよ!」
そのままネットに当たる。すると、後ろで見ていた菊池が笑い出した。
「あはははっ」
「笑わないで! すい!」
「なんだよ! 凪沙ちゃんも一緒じゃない!」
「前には上手くいったからね!? 本当だよ」
「はいはい〜」
「…………」
この運動音痴たちにサーブのやり方をちゃんと教えてあげた後、俺はクラスの男たちとバスケをした。
それ以上バドミントンをしたら、いろいろやばくなる。
なぜか、そんな気がした。
「はあ……、疲れた。久しぶりにバスケ……」
体育館を出た俺は涼しい風が吹いてくる階段に座ってしばらくぼーっとする。
そしてめっちゃ積極的になった望月に慣れなくて、どうすればいいのか一人で悩んでいた。もしかしてイメチェンとか、そういうことかな? そうじゃないとこれ説明できない。
まるで……、恋人みたいな———。
いや、それはお前の妄想だろ。湊。
「ううん……」
「お疲れ〜」
その時、望月が俺の頬に自販機で買ってきた冷たいジュースを当てた。
びっくりしてそのまま体が固まってしまう。
「冷たいよぉ……。望月さん…………」
「あはははっ、反応可愛い! これ、あげる!」
「あ、ありがとう。てか、汗臭いからそれ以上近づかないで……」
「えっ? 私、そんなの気にしない!」
「いや、それでも———」
一体、望月に何があったんだ? どうしてこんな大胆なことをするんだろう。
さりげなくTシャツを捲る望月に何も言えない俺だった。
それもあるけど、なんでじっと人の体を見ているんだろう。変態かよぉ。マジで。
「腹筋! カッコいい!」
「いや! ちょ、ちょっと! 何してるんだよ、望月さん」
「何〜? その女の子みたいな反応は〜? 可愛いじゃん」
「はあ!? い、いきなりシャツを捲るから! 当たり前だろ!?」
「そんなこと気にしないで! 私は気にしないから!」
「と言いながらファスナーを上げる理由はなんだ!? 早く脱げ!」
「青柳くん。女の子に脱げはちょっと……」
「あら、青柳くん意外と肉食系だったんだ?」
後ろから聞こえてくる菊池の声、そして隣に佐藤もいる。
なんでこのタイミングで現れるんだろう。
「青柳くんのエッチ!!!」
「はあ!? いや、これは誤解……。誤解だよぉ! 信じてくれ、二人とも!」
「あら、はなび行っちゃった」
「ええ……」
分からない。なんだろう、この状況は。
そして俺に残ったのは望月にもらったジュースと誤解か。
「ねえ。いきなり女の子に脱げって、どういうこと? その話、詳しく聞かせてもらおうか」
「そうそう!」
ギャル……、怖い。
それより怖いのは先に行っちゃった望月かもしれないな。
……
そして放課後、望月がイタズラだったのをちゃんと説明して誤解は解いたけど、疲れてしまった。でも、そんな俺と違って望月はその状況を楽しんでいるように見えた。ずっとニヤニヤしていたからさ。俺はずっとあの二人にからかわれて大変だったぞ。
「ジャージーはちゃんと洗濯して明日返すね!」
「そんなことしなくてもいいけど……」
「私……、汗かいたから絶対洗濯して返す」
「そ、そうか」
「そしてブレザーも返すからありがとう〜」
「あっ、うん」
やっと望月から解放されたような気がしてホッとしたけど、ブレザーを着た時、すごくいい匂いがしてびっくりした。これはなんって言えばいいんだろう。どんな香りなのかよく分からないけど、一応望月の匂いだった。
俺のブレザーからめっちゃ甘い匂いがするんだけど、いろんな意味でやばい。
これ、どうしよう……。なんで急に恥ずかしくなるんだろう。
「どうしたの? 青柳くん」
「えっ? いや、な、なんでもない。なんか暖かいなと思って……」
「ふーん、それだけ? 本当に〜?」
ニヤニヤしている望月、恥ずかしくてすぐ教室を出る俺だった。
「おっ、危ない。あぶなーい」
「あっ、菊池さん。ごめん」
「青柳くんじゃん。今日は一緒に帰らないんだ」
「あっ、うん……。バイトあるから」
「ふーん」
なぜか俺を見てニヤニヤしている菊池。
「そのブレザーからいい匂いするよね?」
「えっ? なんで分かるんだ? そんなに匂うのか?」
「ああ、さっきトイレで香水つけるの見たからね。どう? はなびちゃんの匂い。いいよね?」
「あっ……、ああ…………。う、うん。いいと思う」
何を言ってるんだろう。菊池は望月の友達なのにぃ。
「ふふふっ、そう言うと思った! じゃね、また明日。青柳くん」
「あっ、うん……」
そして下駄箱の前に着いた俺は、その場でじっとしていた。
自分のブレザーからずっと望月のいい匂いがして、どうすればいいのか分からない。全然分からない。これは罠か? 罠なのか!?
でも、悪くはないと思う。
「ああ、くっそ!」
仕方がなく、下駄箱に頭をぶつける。
「しっかりしろぉ。俺……」
この匂いはマジでやばすぎ、やっぱり中学生の頃と全然違う。
それに俺……、今日めっちゃ望月のこと意識してる。
「……はあ」
そのまま靴を履き替える時、熱くなった自分の顔に気づいた。
一体、何がしたいんだろうな。マジで。
……
家に帰ってきた俺はじっとベッドに置いておいたブレザーを見つめる。
やっぱり、香水の匂いはそう簡単に消えないのか。困るな……。
「…………」
なぜか、固唾を飲む。
「…………」
そのまま枕に俺のブレザーをかけた。ちゃんと知っている、自分がバカなことをしているってことくらいちゃんと知っている。
でも、もう少し望月を感じたかったっていうか、望月の匂いが好きだった。
そしてふと思い浮かぶその可愛い笑顔が俺をすごく苦しめている。
そのままぎゅっと枕を抱きしめた。
「そうだ。湊、今日お母さん遅くなる……って」
「ちょ、ちょっと! 姉ちゃん、部屋に入る時はノックしろ!」
「な、何を……してるんだ? 湊」
「出ていけ!!!」
うわぁ、気持ち悪い。俺……。
くっそ、可愛すぎてどうしたらいいのか分からないんだよぉ。誰か教えてくれ!
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