再会


 過去の記憶へと思いを馳せながら辿りついた場所。私の目の前にはあの時と変わらず注連縄がある。

 注連縄を跨いで越えて、ショウジョウ様の領域へと入る。


「サロ、私──俺だ、トモだ! サロ、いないのか? サロ!」


 大きな声で愛した彼の名前を呼ぶと、ガサガサと草木が擦れる音がして森の奥から仮面レンジャーのお面と今もう光ることのなくなったブレスレットを身につけた少年がやって来る。

 少年は俺に近づく度に大きくなり、目の前にやってきた時にはほとんど同じ背丈の青年となっていた。


「もう二度と来たら駄目だと言ったのに……今度は逃がしてあげられないよ?」


 お面を外してそう言った青年──サロは相変わらず美しかった。


「ずっとサロのことを忘れられなかった。どこで何をしていてもサロのことばかり考えてしまって、ショウジョウ様に食われてもいいからサロにもう一度会いたかったんだ」


 サロの体を力いっぱい抱き締めると、薫香が漂い胸が締め付けられる。


「サロ、俺はお前が好きだ。好きなんだ、愛している。ずっとずっと想い続けていた」


 サロは潤んだ目で俺を見上げると、震える声で言う。


「僕も、トモのことが好き。僕ことを大切にしてくれたキミが大好きだ。……だから、ショウジョウ様に食べられたくないと思ったんだ。でも……」


 サロは一呼吸置いて言葉を継ぐ。


「ショウジョウ様はもういない、僕が。……逃げたトモを追いかけると言うから、殺してしまった。だけどその時の呪いで僕はここからもう動けない」


「……そんなの、たいした問題じゃないさ」


 キョトンとするサロに口づけをする。24年振りのキスだ。

 相手の存在を確認するような長いキスを交わした後、俺は俺の覚悟を口にする。


「サロと一緒ならそこが地獄でも俺にとったら天国だ。俺はサロといつまで一緒にいる」


「……トモ。うん、嬉しいなぁ」


 俺はサロと手を繋ぐと、幼い頃はあれほど怖がっていた暗い森の中へと入っていく。



 夏の終わり、俺はこの世に別れを告げてサロと共に二人だけの世界へと旅立った。



≪終≫

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猩猩の使い あおじ @03-16

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