路上占い、あれこれ㉘【占い師は国境を越える】

崔 梨遙(再)

読んでいただきたい2028文字です。

 僕が若い頃、恋人がいなくなって、次の恋人を見つけようと思った時のことです。そこで、ふと思いました。『今度は金髪美人と付き合いたい』と。


 3連休の初日、僕は京都にいました。京都なら、外国人が多いと思ったのです。ところが、観光名所に来る人はほとんどお連れさんがいます。友達(もしくは姉妹?)と一緒にいたり、男性を連れています。こちらとしては1対1がいいので、1人の観光客の中で、しかも僕の好みの女性を狙いました。そうなると、ターゲットが少ないのです。


 そして、言葉の壁がありますが、僕には秘策がありました。


「エクスキューズ・ミー」

「?」

「キャン・ユー・スピーク・ジャパニーズ?」

「ええ、少し」


日本語が話せる外国人を狙えばいいのです! これで言葉の壁は乗り越えられるのです! 我ながら名案だったと思います。


 そして、この時、僕は決めていたことがありました。『ナンパに成功するまで家には帰らない!』と。(僕は自分でそういう縛りをする癖があるのです)


 それで、結局初日は不発、京都のカプセルホテルに泊まりました。『もしかして、僕はこのまま帰れないのでは?』という不安を抱きながら。


 次の日、作戦を変えました。日本語がわかる女性は、きっと日本に住んでいる、だったら観光地よりも駅の方がいい。僕は京都駅でナンパをすることにしました。


「エクスキューズ・ミー」

「?」

「キャン・ユー・スピーク・ジャパニーズ?」

「ええ、少し」

「食事に行きませんか?」

「ノー」


 何度、この展開を続けたのだろう? 僕は疲れを感じ始めていました。だが、その時、僕のストライクゾーンのど真ん中の金髪美人が現れました。


「エクスキューズ・ミー」

「?」

「キャン・ユー・スピーク・ジャパニーズ?」

「ええ、少し」

「食事に行きませんか?」

「うーん、OK、行きます」

「あなたは学生ですか?」

「fortune-tellerです」

「Oh! 占い師さんですか?」

「イエス!」

「占い師さん、興味あります」


 そこから、僕は必死で頑張ってアピール! 占いもしました。僕達の相性、相性が良かったので盛りあがりました。夜の相性も良いとのこと。


 その夜、僕達はホテルに泊まりました。翌日は、彼女(ソフィア)のマンションにお邪魔しました。帰る時、合い鍵を渡されました。勿論、スグに半同棲状態になりました。


「日本の男性、憶病です。日本に来て私を口説いたのは、崔君だけです」


 ソフィアは英会話学校の先生でした。楽しい日々でした。夏に浴衣を着てくれた時や、一緒にプールに行って水着姿を見せてくれた、あの時のソフィアを僕は忘れません。僕の目に焼き付いています。


 或る日、ソフィアが急遽アメリカに帰ると言い出しました。お父さんが病気になったということでした。僕は、将来的にはソフィアとの結婚も意識していましたので、


「僕も一緒に行く」


と言いました。すると、


「ノーーーーーーーーーー!」


全身全霊で拒否されました。


「なんで?」

「アメリカにはフィアンセがいます」

「ノーーーーーーーーーーー!」


 僕も叫びました。




 僕が30代前半だった時。僕はまた恋人がいなくなりました。そこで思いました。『今度は中国の女性と付き合いたいなぁ』と。


 僕は大規模電気量販店に行きました。外国人対応に中国人を雇っているということを知っていたからです。


 1階。いる! いました! でも、僕の好みじゃなかったです。2階、いる! います! います! いました! でも、また僕の好みじゃない。3階、いる! いる! いました! しかも僕の好みのタイプ!


 僕はその女性に声をかけてしばらく立ち話をしてから名刺交換をしました。彼女はメイファという名前でした。


「連絡ちょうだい! フレンチのいい店を知ってるし。寿司でも、蟹でも、好きなものを食べさせてあげるよ」


 後は連絡待ち。ですが、メイファからの連絡はありません。僕はまた店に行きました。


「なんで連絡くれへんの?」

「え? 遊びだと思ったから」

「あなたが本気になってくれるなら、僕も本気で付き合うよ。明日は休み?」

「はい、休みです」

「じゃあ、明日、食事に行こう! 食べたい物を考えておいてくれ」


 デート。フレンチのコース、ワインでメイファは上機嫌。占いもしてあげました。僕とメイファの相性について。いい相性ではなかったので話をそらしました。それから・・・実はそのフレンチの店から僕の住んでいたマンションは歩いて行ける距離だったのです。


「食後の珈琲を飲みにおいでよ」


 メイファは自然な雰囲気で僕の部屋へ。勿論、僕達は結ばれました。夜の営みの相性は良かったです。それから、メイファはよく僕のところに遊びにくるようになりました。また半同棲状態。


 で、夏。『夏休みは中国に帰る』とメイファが言いました。僕はメイファと真剣にお付き合いしていましたので、


「僕も行く」


と言ったら、


「ダメーーーーーーー!」


と言われました。


「なんで?」

「中国には旦那と息子がいます」

「またこの展開かーーーーい!」



 僕は叫んだ。叫ぶことしか出来なかった。







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路上占い、あれこれ㉘【占い師は国境を越える】 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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