信仰心は登録者数で決まる。無銘の神を信仰する拝神者、何故か強い事が有名拝神者の配信によってバレ始めた。
三流木青二斎無一門
第1話
ライバーネームは『ツクモ』。
彼は現在、荒廃した禁止地区へ足を踏み入れていた。
「……ハイシン開始」
声を出すと共に彼の背中に光輪が輝き出す。
ハイシンシャが使役出来る動画撮影用の機材だ。
完全光化撮影機であり、彼の行動は視聴者からだと第三視点で視聴する事が出来る。
脳内でコメントや登録者など自身のチャンネルを視界で確認も可能。
「ツクモです」
声を発生する。
視聴者数はゼロのままだ。
そのまま彼は歩きながら眼前の敵を認識した。
「今回はあれを倒します」
体長三十メートル。
岩石の如き甲殻をする巨大蟲が大地を浸蝕する様に移動する。
ツクモの姿を認識すると共に奇声を響かせる。
「キシャアアア!!」
唸り声。
接近する巨大蟲。
ツクモは周囲を見回す。
地面には多くの武器が風化しつつあった。
禁止地区には多くのハイシンシャが足を踏み入れる。
その際に破損したり自壊した武器は持ち帰らず地面に廃棄されている。
なので、適当な刀をツクモは選んだ。
刀身が真っ二つに折れた刀である。
それを握り締めて感触を確かめる。
実にゆったりと、ショッピングモールで質の良い野菜を手に取って確かめる様に。
刃毀れを起こした刀を握り締めて、好感触。
「今回はこの刀を使います」
刃の無い刀を地面に突き刺す。
そして、両手を軽く叩くと共に呟いた。
「奉納」
その言葉と共に肉体の内側から力が溢れ出す。
刀を抜き取ると共に、その力を刀身に向けて流し込んだ。
「神器使役」
大きく腕を振り上げた。
瞬間、刀身が肥大化していく。
巨大な蟲を一撃で分断する刃と化す。
蟲は、その一撃で一刀両断された。
緑色の液体を周囲に撒き散らしながら、蟲は死ぬ。
「……倒しました」
さも当然の様に呟くツクモ。
そして視界に映る視聴者数を確認する。
……当然の様に視聴者数はゼロだった。
「では……これで終わります」
そうして、ツクモは背中の光輪を消す。
配信を終えた後に、ツクモは首を擦りながら当然の事を呟いた。
「今日も登録者はゼロか……神様になんて伝えるか」
悩ましいと思いながらゆっくりと歩き出す。
「まあ、好きなモノを作れば良いか……財布の中は……」
エプロンの前ポケットに入れた財布を取り出す。
所持金は一万五千円……否、訂正を行う。
奉納を行った為に、所持金は五千円となっていた。
「……今日は素直に説教されるか」
そう呟き、禁止地区を離れて歩き出す。
「ハイシンシャってのは、大変だな」
他の人気ハイシンシャはどうやって人気になるのだろうか。
その事を考えながら、
神が信仰を得る為。
多くの奇跡を人に伝わらせる為に生まれた。
動画配信サイト『
登録者は神に対する信徒と同一視され、現金による有料コメントは奉納と成る。
そして人間は神の威光を示す為に、神の権能を賜り配信を行う……即ち、
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