全国から呪物が集まってくる「呪物神社」として知られる小さな神社を営むのは白河四兄弟。
それぞれが甘く熱い親愛を向け合う彼女たちの、時にコミカルで時にシリアスなやりとりによって芽生え育まれる感情。年不相応な成熟さと年相応な無邪気さと不器用さが普段はぶつからない分、気持ちを直に相手へと伝えようとしたときに吐露してしまうような。会話の瞬発力と感情の爆発力がそれぞれのキャラクター像を鮮明なものにすると共に、お互いを知ることによって関係性をより深めていくような兄弟の絆を感じることができました。
また、丁寧な描写によって高められる呪物の恐ろしさと不気味さは、展開の中心でその存在感を放つだけでなく、自然に物語の世界へ引きずり込まれてしまうような。まさしく呪い的で不思議な魅力を感じました。ただ背筋がぞっとするような恐ろしさだけでなく、その呪物がどんなものなのかを知ろうとし、考えていく主人公の様子や熱のある呪物トークには恐いものに対する向き合い方を促されているようでした。
そして、兄弟の団らんの場面である食事や料理の場面では、心温まるクスッとしてしまう軽妙さだけでなく、主人公の性格や様子が料理を通して魅力的に引き出されているように感じました。視点の関係から外見や好きなものなどの情報が少なくなりがちな主人公のことが、もっと好きになれるようなエピソードやシーンが摂取できます!
他の三人とは遠縁である境遇から「あひるの子」だと自身を揶揄する主人公と兄弟たちとの関係性を、料理と呪物。異なる角度から差し込まれる心温まる家族愛を存分にお楽しみください!
素晴らしい作品をありがとうございました。
長野県にあるごく平凡な社・清流神社。まつりたちはこの小さな神社を兄妹みんなで守っていた。呪物が集まってくることから、ここは呪物神社とも呼ばれていて――
ほっこり兄妹パートから始まる本作ですが、呪物に関わる不穏パートではわちゃわちゃした空気が一気に凍りつき、その温度差にビックリしました。
あたたかさ優しさを感じられる一方で、悪意やエグさといったものもしっかりと感じられる、正と負をあわせ持った作品だと思います。
また、呪物について語られるマニアックパート、ごはんについて饒舌に語り出すお料理パートもこちらの作品の魅力だと思います。
タイトルにもある「あひる」とはどういうことなのか?
その事情にまつわる繊細なエピソードや、まつりの心にある影、それ故の行動や、周りの眼差しからも目が離せません。
どこか不安定なところのあるまつりは、周りにそっと支えられながら、一体何にたどり着くのか。今後が気になります。
※「第28話 夢と現」までを読んでのレビューです。