第12章：運命を超えて

静かな村の暮らしが再び訪れた。だが、咲と陸の心の中には、これから訪れるであろう新たな試練に対する覚悟があった。

「村の人たちが、もうすぐ俺を神として祭り上げる。」陸は朝食を共にしているときに、ぼんやりと呟いた。

咲はそれを聞いて少し驚いたが、すぐに笑顔で答える。「でも、それって良いことだよね。あなたが村を守ってくれたから、みんな感謝しているんだよ。」

陸は少しだけ考え込み、最後に深いため息をついた。「でも、俺にはそんなもの、要らない。」

「要らない？」咲は少し眉をひそめる。「どうして？」

「だって、俺はただ、君と一緒に普通の生活がしたいだけだ。」陸は咲を見つめ、真剣な表情を浮かべた。「こんな運命に縛られたくない。でも、俺の血がそれを許さないんだ。」

咲はその言葉に心を痛めた。運命は彼をただの「人間」ではいさせなかった。どれだけ願っても、その力は彼の一部として生き続ける。狼の血が流れている限り、彼の未来は定められているのだ。

「陸、私もあなたと一緒にいられるなら、それでいい。どんな形でも、私はあなたを支える。」咲はそう言って、陸の手を握り締めた。

その時、突然、村の外から激しい足音が響いた。遠くから聞こえる鳴き声が不気味に響き、咲と陸は顔を見合わせる。

「また、何かが起こったのか…？」陸は立ち上がり、咲を守るようにその手を引いて外に向かう。

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