運用の効率化
現在の自衛隊は、人手不足に対して『運用の効率化』『無人機、スタンド・オフ防衛力等の拡大』の2方向から対応を進めています。
まず、『運用の効率化』から解説していきます。
具体的に言えば、足りない人員をいかにして部隊配置するかという話です。
どれだけ技術が進歩しても、戦場において絶対に生身の人間が必要な部隊。それは歩兵、自衛隊で言えば普通科です。
歩兵の任務である『地域の占領』を達成するには、どうしても生身の人間が必要になります。
極端な話をすれば、
つまり、歩兵部隊に人員を集中させることで、人手不足の影響を最小限にすることができます。
実際、平時の自衛隊の中で特に人手不足が深刻な部隊は、特科などの、人数が少なくても他部隊と比べて機能の喪失を抑えられる部隊か、あるいは有事の際に予備自衛官等で補完できる部隊です。
どちらにも当てはまらない普通科部隊については、比較的十分な人員を確保しています。
また、より少ない人員に、より高い火力を発揮させることも重視されているようです。
具体例としては、『もがみ型護衛艦』(少人数で運用できる護衛艦)や、『即応機動連隊』(機械化された諸兵科連合部隊)、『19式次走榴弾砲』(従来の火砲より少人数かつ効率的に運用できる火力)などが挙げられます。
さらには『水陸機動団』『第一空挺団』『機動師団・機動旅団』など機動運用を想定した部隊の増加、部隊や物資を迅速かつ大量に輸送する兵站能力の強化により、必要な地域に、十分な規模の戦力を、迅速に輸送する能力の強化も重視されています。
強力な機動運用能力を持つことは、戦場で敵部隊に対する数の上での優位性を生み出すことに繋がり、人手不足をカバーすることができます。
さらには、特殊作戦群と中央即応連隊をまとめた『特殊作戦団』の設立も計画されており、これは海外派遣の対象となることが多い二つの部隊を統合運用することで、自衛隊の海外展開能力を高めることを企図していると思われます。特殊作戦群も中央即応連隊も、自衛隊でも特に意思、練度が高い隊員たちが多く所属している部隊です。
また、危険度の高い海外展開部隊の運用を効率化することには、死傷者を抑える効果もあります。
このようにして、自衛隊は足りない人員の効率運用を進めることにより、人手不足に対応しています。
ですが、これだけで人手不足に対応することはできません。
なぜなら、歩兵に十分な人手があっても、敵戦力を撃破する火力に欠けていては、こちらの戦力は敵の攻撃を受けて失われてしまうからです。
この火力を担うのが、『無人機』『スタンド・オフ防衛能力』です。これについては次のエピソードで、詳しく説明しようと思います。
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