ウェポン・ガールズ
芦毛逃亡
Ep.1西暦2025年?
ドアを開けると、そこにはとても言葉には言い表せない生命体がいた。
キュエェェェェ!!!
私を見つけた途端叫び出した。
その叫びに反応したのか、同じような形をしたものが群れを成してやってきた。
目の前の地獄絵図になすすべがなく、体中の力が抜け、そのまま膝から崩れ落ち、目の前が真っ暗になった。
私はその瞬間、人生がコマ送りのように流れて行った。これが世に言う走馬灯なのかもしれない。だが、ある場面から鮮明に映し出された。それは昨夜の出来事だった。
私は仕事終わりに居酒屋を三軒はしごし、愚痴を口にしながら千鳥足で帰った。
家に着き、一目散にテレビを付けた。深夜帯だったのにも関わらず、全局ニュース番組だったのは覚えているが、内容までは覚えていない。私はそのまま倒れこむようにベットにダイブし、そのまま寝てしまった。
『対象物発見、第一形態から第二形態に移行を始めています。今回はレールガン「ボルトイエローLevel1マークII」を要請します』
外の地獄絵図から、女性の声がした。何を言っているか分からなかったが、私には神の囁きのように聞こえた。その声の出所を探すため、必死に体の力を振り絞り廊下に出た。
「た、助けて!!誰か!!」
震える声で叫んだ。
その瞬間、先ほどの女性の声がまた聞こえた。
「生存者発見、応援を要請します」
女性の言葉の数秒後には別の女性の声が聞こえた。
「あなたが生存者さんですね、もう安心してくださいね。今ここは奴らの支配下になってしまっているんで、一度建物ごと破壊します」
ここは10階のはずなのだが、空中にメイド服らしき服を着た女性が現れ、そのまま私の手を曳いた。
「生存者さんの保護完了でーす!」
「チャージ完了、発砲の許可を」
私はそのままメイド服の女性に連れられ、空を飛んでいた。
高所はさほど怖さはないのだが、状況が状況だったため、情けなく叫び続けていた。
元々私がいたマンションには、先ほどの怪物と、こちらもメイド服を着た女性が、禍々しい銃のようなものの銃口を怪物に向けていた。
ドアを開けてからここまでで約5分、頭の整理が追い付かなかった。
「発砲許可承認、一発で仕留めます...」
銃口が光り輝きだした。
『爆ぜろ害獣』
その一言を放つとともに、光り輝く一つの線が引かれ、一瞬にして大爆発が起きた。
爆風と砂ぼこりで、目の前が何もかも見えなくなった。
「生存者さん、もう大丈夫ですよ~」
優しく握った手をそのままに、足が地面に着く感覚があった。
私はその安心感で目を開けた。
先ほどまでの私の住んでいたマンションが石1つ無くなっていた。
その光景に開いた口が塞がらなかった。
「No.77、生存者は?」
先ほどの禍々しい銃を持っていたメイド服女性が目の前に現れた。
「この子よ、まだ何も確認してないわ。可愛い妹に任せようと思ってね~」
「生存者を発見した場合は、いち早く名前、出身地、生年月日を確認すると言われています。それに私は妹という名ではありません。またあれを忘れただけでしょ、あなたは『特殊軍事機構戦闘特化型武器少女』としての自覚が足りていません。もう一度生産元からやり直してみればいかがですか?」
「もぉ〜!人は忘れることもあるのよ!」
目の前のメイドは私の存在を忘れ、痴話喧嘩を始めた。その話の中に聞きなれない言葉がいくつもあった。特に───────
「あ、あの、特殊軍事機...なんて言いました?」
「え?私たちを知らない?」
「すみません、どこかでお会いしましたっけ?」
私の反応に驚いた顔をしていた。しっかりした方のメイドが急いでメガネを掛けた。
「青葉唯華、日本、2000年6月21日、最後の記憶が....2025年7月5日午前2時58分!?」
No.77と呼ばれたメイドが先程までのふわふわした顔つきを変え、真剣に私を見つめた。その鋭い眼光に私は恐怖を覚えた。
「妹、今すぐ本部に連絡、隊長にこの件を伝えて。私は車を取ってくる」
「了解」
私のことを知った途端、急に空気が重くなった。程なくして車が到着した。それはリムジンのような車体の長さに、運転席には人影がなかった。
何も知らされぬまま私は車に乗りこんだ。
車内は沈黙が続く。
「あの、そのメイド服って趣味ですか?」
私は空気に耐えられず、訳の分からない質問をした。
「機密事項ですので」
「そしたら、お名前なんて...」
「機密事項ですので」
「先程の生命体...」
「機密事項ですので」
彼女は機密事項としか言わずに車内はもっと空気が重くなった。
そんな車も数分で目的地に到着したらしい。
車からおりるとそこにはバカデカい建物がそびえ立っていた。
ドアだけでも数十メートルあった。
そのドアを抜け突き当たりのエレベーターで最上階に向かった。
「これから会うのは、ここの隊長です。くれぐれも無礼のないように振舞ってください」
その一言と同時に扉が開いた。
その瞬間、他のメイド服を着た人々が一斉に私の方を向き、頭を下げて言った。
『お帰りなさいませ、マスター』
そのメイドのアーチを通り抜けると1人の白衣を着た女性と、迷彩柄ではないがどことなく軍服のような服を着た女性が待っていた。
「No.1028只今帰還しました」
「同じくNo.77も帰還で〜す」
「ご苦労、そしてそこにいるのが人間か?」
「はい、危険区域Bのマンションで発見いたしました」
「そうか、ここからは私が引き継ぐ。あなた達は戻りなさい」
『御意』
そう言い残し2人のメイドはこの場を去った。
去り際にNo.77は私に微笑んだ。
「こんにちは、えっと...青葉唯華さん。私はこの軍の指揮をしている、西城聖美と申します。早速ですが、あなた今は西暦何年か分かりますか?」
「西暦ですか?西暦2025年、確か昨日が7月4日で、私が家に着いた時には日付が変わってたから...」
私の答えに後ろにいた白衣の女性が笑った。
「聖美!最高だよこの子!私のモルモットにしたいぐらいた!」
「やめなさい和奏、この人は宝よ?」
「仕方ないか、でもここは同じ日本人として私もお話しようかな」
「それは構わないわ」
またしても私は蚊帳の外にいた。
ただ、目の前の2人は何故か安心感があった。
先程のメイド達にはない何かがあるような気がした。
聖美さんが私に言った。
「落ち着いて聞いてくださいね?」
「え?はい...」
『只今西暦12025年です』
「は?」
私は急に膨大な数を言われ、目の前はそのままブラックアウトした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます