第39話 追い上げ
シェラドンレースの最終戦、ボンドGPのスタートが近づく。これで本年度の
シンジの場所からからライバルたちの様子がわかる。ショウは気分が昂るのか、ずっと手や腕を回してリラックスしようとしている。マイケルは集中しようとしてじっとして動かない。ロッドマンは神経質そうにマシンをチェックしている。一方、信二の2つ前の
「いよいよ泣いても笑ってもこれが最後だ・・・」
信二はじっとコースを見ながら頭の中でレースプランをおさらいしていた。必ず勝つという確信を得ようと・・・。
やがてスタートの瞬間を迎えようとしていた。ライダーたちは緊張しながらシグナルを注視する。
「3,2,1,スタート!」
シグナルが変わり、各マシンが一斉にスタートした。その最初の混乱した状況から抜け出したのは何とライアンだった。彼のマシンはスタートダッシュを決められるようなセッティングにしてある。それでも並み居る凄腕のライダーを抜いて、先頭を走るのは難しい。それをライアンはやってのけたのだ。セカンドライダーになって彼なりにコツコツと努力してきたことが報われたのだ。
まずは最初のコーナーだ。ライアンはリーンインしてスムーズに回っていく。だが彼のマシンはこれ以上の加速の伸びはない。すぐにショウに後ろにつかれる。だがブロックしてなかなか抜かせない。彼は信二からショウのくせを教えられていたのだ。その後にマイケル、ロッドマンが続く。ハナを抑えられて団子状態となっている。
信二はその間に前を行くマシンをぬいていく。シーナ国のカルロスとバーバラ、イリア国のマルコ、リモール王国のウッドリア、ルーロ共和国のドロテア、ランス国のイザベル・・・。いずれも凄腕のライダーだが、信二とこのマシンの敵ではない。3周目までに5位になる。やがてロッドマンの姿が見えてきた。
「いける!」
信二は確信した。だが先頭を行くライアンが限界だった。マシンを酷使しすぎたこととスタートダッシュに合わせたセッティングのため、ずるずるとスピードが落ちてきた。その横をショウ、そしてマイケル、ロッドマンが追い抜いていく。
だがこの状況に持ち込めたことで信二には十分だった。
「今からが勝負だ!」
信二はライアンを抜いて4位になった。そしてロッドマンに襲い掛かっていく。スーツカ国のマシンはそれほど脅威ではない。だがロッドマンが曲者だ。普段は堅実な走りをしているのに勝負がかかったこのレースはかなり飛ばしている。信二がコーナ―で追い抜こうとしても執拗にブロックしてくる。
(それならこれで!)
信二はロッドマンの後ろにもぐりこんだ。そして最終コーナーを回って長い直線に入る。スリップストリームに入っているので信二のマシンは前に引っ張られる。その勢いのままに横に出てロッドマンを抜いていく。改良されたMB4気筒Rだからできる芸当だ。スタンドの観客がその様子に大きな歓声を上げる。
(あと2人。マイケルとショウ・・・)
2人はシンジの前で激しくデッドヒートを繰り広げている。加速に分があるボンド国のマシンとトップスピードが速いヤマン国のマシンの戦いだ。マシンの性能ではほぼ互角だ。後はライダー次第になる。そこに信二が加わろうとしていた。
(まずはマイケルだ!)
信二は現在2位のマイケルをロックオンした。ボンド国のマシンはコーナーでの立ち上がり速度は速いが、信二にはコーナーに自信があった。マイケルはリーインスタイルでコーナーを曲がるが、信二はさらに深くリーインして追って行く。だが
レースは7周目に入った。マイケルと信二がバトルを繰り広げている間にショウは逃げる。
(早くマイケルをパスしなければ・・・)
このままマイケルに引っかかっていたらショウの逃げ切りを許してしまう。信二はここで勝負に出ることにした。コーナーでハングオンスタイルを使うことにする。左右に体をマシンにぶら下げて曲がっていくとコーナーの速度は圧倒的に速い。だがマシンに負担がかかる。それにマシンが不安定になるため転倒の可能性がある。だが今はやるしかない。
(いくぜ!)
コーナーでハングオンする。マシンは動揺するがそのまま
(次はショウだ!)
信二は前を走るショウをロックオンした。
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