第6話 痴女怪人と偽装結婚した

 新世界征服方針が発動し3年が過ぎた。

 名目上俺とキラーは結婚し、ゲドー様は俺とキラーの子供として戸籍登録さている。


「行ってくるのじゃ」


「はい、気をつけるのよケイト」


 名前はゲドーやキラーでは不味いので、ケイト、キララになっている。

 ちなみに俺は中田ジュンという前世の俺というか、ゲドー様が復活させた死体の名前を名乗っている。


「さて、私も行くわね」


「見送るよ」


「チッ……」


 嫌なのは分かるけど舌打ちされるのは傷つくぞ。

 名目上俺とキラーは夫婦になりはしたけれど、ゲドー様の1番になりたいキラーにとって、俺が目の上のたん瘤である事には変わらないためこういう態度をされるのだ。


「じゃあ気をつけて行ってくれハニー」


「分かったわダーリン」


 仲が良いフリをするのはイメージ戦略だ。家庭内がまとまっていると思われる方が、社会的信用は得やすいからだ。

 いや本気で結婚生活するのもありかなって思うよ?ゲドー様曰く、怪人同士の間でも子供は出来るみたいだし。キラーは見た目だけなら超美形だし。


 残念ながらジャッカー同士では子は成せない。棒と穴があるから行為は出来るけどね。子供が必要になったら僕がジャッカーを作って渡す必要がある。ただそれだといつか限界が来る。老いて死んだ事にするジャッカーをリペアして子としジャッカーの間に派遣していく事になる。

 これってちゃんとシステム化しておかないと、僕はずっとジャッカーのリペアに追われるようになってしまう。まぁしばらく先の話だけどね。


 ちなみに、キラーが向かうのは地元婦人会だ。これもイメージ戦略の一環だったりする。


 目指すはとりあえず地元名士だ。会社経営者とはいえ、設立して10年しか経っていないベンチャー企業。まだまだ信用は足りていない。


「ふーん……、やはりアメリカはエターナルレンジャー関連予算を出し渋り始めたか……」


 タブレットで、経済新聞サイトの政治記事を読むと、アメリカ上院議員で、怪人被害が3年間全く起きていないのに、エターナルレンジャーを管理統括している地球連合関連予算が例年と同額計上されて、その負担金をアメリカ政府に請求してくるのが納得できないと紛糾している事が表示された。

 

「日本も同調するか、それとも特に疑問を持たず支払うか……」


 日本は事なかれ主義らしく、地球連合から請求される負担金をそのまま払ってしまっているようだ。


「復興資金に充てられているんだけどねぇ」


 エターナルレンジャー関連予算の多くは、巨大化した怪人と、エターナルロボの戦闘によって破壊された街の復興資金に充てられている。

 日本やアメリカやユーロ圏などの経済大国は、自国の予算ですぐに復興を捻出したけれど、そうでは無い国は自国だけでは復興に多大な時間がかかってしまうため、地球連合のエターナルレンジャー関連予算に組み込まれる復興補助金をあてにしている。


 けれど、自国の力で復興できてしまう自国主義のアメリカにとって、他国のために使われる事になるエターナルレンジャー関連予算は我慢ならないようなのだ。


「今まではアメリカが恩恵受けてたのにね……、日本程じゃ無いけど……」


 怪人と戦っていた頃のエターナルレンジャー関連予算の多くは、損耗した兵器のメンテナンスに充てられていた。その技術にはアメリカの特許と技術に不可欠なものが多く、多くの予算がアメリカに流れていた。

 日本の場合は最も怪人出没率が高く、街の被害も大きかった事と、技術の核となる陰陽道の式神技術に支払われる予算が多かったため、エターナルレンジャー関連予算は日本にも多く流れていた。


 怪人が日本を最もターゲットにした理由はその技術の核心となる陰陽道が日本にものという事になっているけれど、本当は日本のテレビ番組の世界だからという気がしなくもない。


 ちなみにこの陰陽道の式神関連技術は世界に公開されている。けれどそれは日本の鬼と交わった陰陽道の一族の血が無ければちゃんと効果を発揮しないものらしく、他の国で再現するのは今のところ

難しいとされていた。


 欧州の、古き神や精霊や妖精と交わった血族であれば可能であったそうだけど、15世紀頃の欧州で異端審問が隆盛していた時期に、そういった血族は火炙りにされてしまったらしく、生き残りも市井に隠れ血を取りてしまい薄まって、陰陽道の式神程の力は出せないそうだ。


「でも、ゲドー様以上の血は難しいだろうな……」


 ゲドー様は悪魔だ。別名堕天使。亜神であり、日本の昔の陰陽師が交わった鬼神より格が高い存在らしい。


 ゲドー様は、古き時代に欧州の王族が交わった神と同格で、鬼神はゲドー様が作り出す怪人と同程度ぐらいの格らしい。


 ゲドー様は神話の時代にクルースンに封じられた堕天使で、同格の状態で地球圏にいるのは、月に封じられた女神たちぐらいだそうだ。

 日本でいえばカグヤ、ローマで言えばディアナ、ギリシャ言うアルテミス、インドでいうアマネティ、イギリスでいうアリアンロッド、中国でいう嫦娥じょうが

 同一神だと言われてたりもするらしいけど、ゲドー様がいうには全員別の女神様なんだそうだ。「我だけ1人で寂しかったのじゃ」というのが、ゲドー様が自身をクルースンに封印した人類を憎む理由だったりする。


 まぁ、幼稚園に通うようになってから、ゲドー様はちょっと他の園児に影響されて人類に対する憎しみが薄れて来ているけどね。

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