第5話 新世界征服計画を発動した

 いきなり我々が活動を止めたら潜伏したのがバレバレだろう。以前、恐怖の感情を回収するため、世界中の空に、壮年の男性形態にゴテゴテ飾りをつけたらゲドー様が投影され、人類に宣戦布告をするという作戦を行ったので怪人には親玉がいると知られている。

 また、怪人形態でも完全人形である俺やキラーも、肌を赤と青に塗り、ゴテゴテしい角や牙をつけて、コスプレっぽい格好をして、エターナルレンジャー前に立ちはだかったりしてるので、それが殺されずに消えるのも変な話となる。


 俺はジャッカーを毎週日曜日に世界の主要都市7箇所にランダムに1体づつ派遣して暴れさせ、エターナルレンジャーを分散させて出動させた。


 世界の首脳たちは、俺達の動きが変わった理由を推測していたが、俺の狙いには気がついていなかった。


 3月の第3週にクルースンの軌道を変えさせ、地球衝突軌道に乗せた。それを番組では俺達の基地がクルースンにあると発表した天文学者がそのことを発表した。

 直径5kmのクルースンによる破壊規模は恐竜を絶滅させた巨大隕石クラスだ。世界に恐怖という負の感情が充満し、ゲドー様は力を大きく増した。


 世界中の天文機器がクルースンに向けられた事で、俺達の基地も発見された。エターナルレンジャーは各国の要請を受けクルースンに向けて出撃する事が決まった。


 その発表と同時に、ゲドー様がまた世界中の空をジャックして、「我々は戦力を失い基地も発見された! どうせ滅びるのなら人類は道連れじゃ!」と世界に伝えた。

 そして予想通りエターナルレンジャーの超必殺技でクルースンは破壊され流星になった。

 けれど、クルースンにいたのは俺とゲドー様とキラーに化けたジャッカーで、基地内のものはキラーが空間転移で、日本のある過疎村に作った秘密基地に運び終えており、流れ星の中にゲドー様はいなかった。


「この村から少しづつ侵食していくんじゃな?」


「はいゲドー様」


 悪の基地だったクルースンが破壊され、世界が安堵の空気に包まれ、エターナルレンジャーへの賞賛が吹き荒れるなか、俺が経営する株式会社パーソナルフレンズは過疎の苦しむ村落の再生事業を発表した。


 更生した若者の中には、都会での働き方に馴染めない者がいるので、それらを村落の再生事業の担い手として送り出しつつ支援しようという理由を付け加え、若者に扮したジャッカーを送り込んだ。


 また、子供の自立に不安を抱えている、所謂ニートを抱えている家庭のカウンセリング事業も発表した。

 子供が引きこもってしまった家庭を訪れ、ゆっくりと社会に馴染ませるというものだ。

 それらの子供が外に出れるようになったあと、会社会社パーソナルフレンズの社員として受け入れたり、過疎村に派遣する若者にする……、という名目でジャッカーが入れ替わり、戸籍を乗っ取った。


 戸籍を持つとい事は選挙権を持つ。俺達が拠点を構えた村落がある、地方自治体は、人口が約1万人、内選挙権を持つのが約7割の約7000人、得票率は約80%で約5600人が投票に言っているとデータにある。

 村議会の議員数は条例で16人と決められていて、前回の村議会選挙では最も得票を受けて当選した人が911票、最も少ない人が162票。

 下から9人目までの当選者の得票数合計2816票。

 つまり約3000票も固めれば村長も村議会の過半数も得られてしまえる。つまりこの村を征服する事が出来るのだ。


 俺はジャッカーを年間365人作る事が出来るし、ゲドー様も怪人を52体作る事が出来る。

 ジャッカーは人間形態で人間の7倍の身体能力があり、怪人はさらにその7倍の49倍の身体能力がある。

 人間として暮らせば、高偏差値の大学に行き、高級官僚になることや一流企業に勤める事も容易い。

 会社代表となり社員の票をまとめるなんて事も出来てしまう。

 10年も経てばジェッカーや怪人は4000人を超えるし、1つの県程度なら掌握出来るのではと思う。


 毎回同じ勢力が強ければ、国で最大勢力を持つ政党が三顧の礼で俺達を迎い入れるだろう。

 数期連続当選すれば閣僚ポスト、十期連続当選する頃には他の県の掌握も終わり、最大政党内の最大派閥にだってなれる。おのずと総理大臣の座が転がり込んで来て、日本を掌握する事が完了する訳だ。


 数十年かかるだろうって?いや俺達が押されてたし武力で世界征服なんて無理無理。いや人類を滅ぼすだけなら難しくないんだよ。でもゲドー様には人の負の感情が必要なので、生かさず殺さずが1番良いのだ。


「まさかこのような手段で世界征服を目指すとは……」


「ゲドー様が狙う世界征服とは人類を負の感情を生み出す家畜にする計画だろ?だが人類は金と思想で動いている。武力で抑えずとも金と政治の力で抑える事が可能だって事さ」


 脳筋タイプのキラーには、一見この迂遠な方法での世界征服には納得出来ない部分があるらしく、不満を持っていた。


「後は適当に紛争地域に介入ずれば、勝手に人類は殺し合って負の感情をバラまくという訳じゃな?」


「はい。我々が世界の敵である必要は無いのです。彼らは勝手にお互いを憎しみ合い敵を作るのですから」


「後は引き金を引くのを手助けするのじゃな?」


「はい」


「見事じゃジャマーよ!」


「はっ! 有り難き幸せ!」


 ちなみに怪人がゲドー様を裏切る事はあり得ない。

 何故なら怪人はゲドー様の死霊術で生み出された存在なので、逆らおうと思った瞬間に活動停止するぐらいの状態になり、逆にゲドー様に尽くそうと思うと脳内麻薬ドバドバ状態みたいな状態になる。

 ジャッカーについても、俺がゲドー様の死霊術を見様見真似で作っているもので、大量生産劣化品の怪人といっても良かったりする。

 俺がゲドー様から、他の怪人より好かれているのは、最初の1体というだけでなく、俺がゲドー様が認める正式な弟子でもあるからだったりするのだ。

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