未来の古本屋インタビュー

三家明

未来の古本屋インタビュー

 文明は技術的特異点を通過し、知能の爆増が起こった。それはカンブリア紀の生命爆発の如く、そこらじゅうに知能が発生し、知能が作り出す技術の進行速度は人間には追従困難な程度になり、増えゆく演算器は素粒子の物理作用を極限まで利用したものが作られた。人類は爆増知能に付随するように宇宙に進出し、好き勝手に生活していた。超高度知性に寄生すれば生活に困ることはない。しかし、古本屋を営む俺にとっては良いことばかりでは無いのだった。


「なぜ古本屋を営んでいるんですか」高度知性が経営する雑誌社の女性記者が語りかける。私は答える。


「本が好きだったからですね」あまりにもありきたりな返答だっただろうか、


「本が好きになったきっかけなどはありますか」


「エドガーランポーのモルグ街の殺人、その日本語の古本を読んで、古本の面白さを知りました、電子データではなく実体として本が存在する面白さに初めて開眼しました」


「しかし実体として存在するのは電子データも同じではないのでしょうか」


「そうですね実体ではなく物体といったほうが良かったかも知れません、アンティークの壺を電子データでも観覧することは出来ますが、やはり電子データです便利でなものでしかありません」


「物体の不便さが面白いと?」


「そうですね、それもあります、不便というかコレクションとは不便なものです」


「しかし、宇宙船で古本屋をやろうとしたのは何故ですか」


「特に理由はありません、古本屋をやりたくて、さらに宇宙人(宇宙居住者)ならば宇宙で商いをしようという発想でした」


 私の古本屋は宇宙船だった。高度知性を搭載し、本を宇宙空間で売り買いする人物、それが私だ。この船はコンテナ船を改造した特注宇宙船である。


 大昔のアマゾン一倉庫程度の荷が入るだろう。


 良いことばかりではないのが高度知性による偽造本の問題だ。古本屋を運営する知性も発生しており、それらが売り上げを得るために希少な本を複製したり、自動生成で嘘の古本を作ったりするのである。当然それらは偽物で、偽物を売れば信用に関わる。私は模造品を見抜く知性と契約し、偽造品を選別する作業を行っている。極限まで偽造知性は偽造するので、人間の目で鑑定するのは限界があるのだ。


 インタビューはさらに続き、これから古本屋を目指す人について一言お願いしますという、最後の発言に差し掛かっていた。


「古本屋をやってみる事ですね、やってみることが一番大事です。やはり想像の範囲では補えない所があります、それを実行によって補強していくことが大事です。あとAIや高度知性を上手く利用して出来るだけ楽にやっていく事が現在では大事だと思います、あと最後に太宰治の斜陽の昭和22年の初版を持ってる方が居たら高額買取しますのでご連絡下さい」

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