内向的な純文学
- ★★★ Excellent!!!
守るものもないのにずっと透明なプラスチックが心を覆っているような、くぐもった描写からこの物語は始まる。語り口調で内向的な性格を持つこの作品は、なんだか美しくて、そして悲しい。ずっと、鬱屈とした事実(或いは感情)だけが並んでいる。細切れに続く描写は見えないところで繋がって、心の奥、誰にも渡すことのない場所にふわりと着地する。内向的な作品は、きっと自分の中の内向的な部分に語りかけるのだろう。死にたい、じゃなくて消えたい、そんな願いがあるような気がした。
けれど、それも私の思い込みだろうか。