【辛・本文追記】1-9 乙女ゲーム フライヤーズ・ナイツ〜転生先が推しをダメにした悪役令嬢で最悪だ!〜
悪役令嬢転生モノ。
辛口で、とのことなので忌憚なく書かせていただきます。
まずタイトルから。
【乙女ゲーム】
これ、不要では?
おそらく「フライヤーズ・ナイツ」だけだとゲームタイトルだと分かってもらえないかも……という不安から付けたのかなと推測しますが、その不安は不要です。
メインタイトルの段階では乙女ゲームと分かろうが分かるまいが、読者の印象に大した影響はないからです。悪役令嬢転生でだいたい予想はつきますし。
なので「フライヤーズ・ナイツ」だけでいいですし、不安の解消目的ならもっと作品内容を表すメインタイトルにしたほうがいいでしょう。
今作で大事なのはサブタイの方です。
ですけど……。
【転生先が推しをダメにした悪役令嬢で最悪だ!】
意味は分かるんですが、どうにも噛み砕きにくい。
う〜ん。
一文でこのシチュエーションを説明するのがそもそも難しい気がします。
メインとサブで状況を分けるのが良かったかも?
ぶっちゃけ「フライヤーズ・ナイツ」って名前自体に大きな意味は、たぶんないんでしょうし(ナチュラル失礼)。
すごい適当ですけど、
「転生悪役令嬢は采配を振るう 〜私なら絶対推しキャラの足を引っ張らない〜」
みたいな感じにするとか。「推しキャラ」でゲーム世界だと匂わせてるのがポイント。
あらすじ。
ゲームの知識を活かして、セコンドとして婚約者を闘技大会で勝たせようとする。
でも行動の決まったNPCと違って予測不可能な「ゲームの主人公」が相手のセコンドについていて……。
そこで悪役令嬢の何らかの切り札発動!
なるほど。
「はめフラ」アニメを見たくらいで、このジャンルには詳しくありませんが、やりたいことは分かります。
ただあらすじ時点でツッコミどころが多いように思えます。
まず「ゲームに詳しいから作戦もわかるし、闘技大会でも婚約者を勝たせられるはず!」という点。
言うほど、そうか?
「フライヤーズ・ナイツ」がどういうゲームかは不明ですが、ガチの剣戟アクションがあるゲームとは考えづらい。そうだとしたらそう書いておくべきですし。
よくあるノベル系のゲームだとすると、闘技大会のシーンもきっと特定の選択肢や、それまでに立てたフラグ、ときメモのようなパラメータがあるゲームならパラメータによって勝敗が決まるだけのハズです。
さらに言えばプレイヤーの分身たる主人公が戦うわけでもない。
そんな状態で、ゲームの世界とはいえ生身で実際に動いて戦う試合に対して適切なアドバイス、できますかね?
すいません、野暮なのは分かります。
ゲーム知識で無双はゲーム世界転生モノの定番ですしね。
ただこう、わざわざツッコミどころになりそうな手法を選ばなくても……とも思います。
せっかくなら設定を活かしたほうがいいと思います。
例えば。
ゲームだと、悪役令嬢が婚約者を勝たせたいあまりに盤外戦術的な嫌がらせをしたり真剣勝負に水を差すようなイベントが起こる。
転生した主人公はそんなことはせず、純粋に婚約者を応援したり、現代知識を活かしたトレーニングを提案したりする。でもいざ試合当日になるとゲームの強制力でゲームと同じ嫌がらせイベントが起きそうになってしまう。試合の裏でそれを何とかしようと主人公は奮闘する。
……とか。
【対戦相手のマーク・ディオ・ルースジュニアの婚約者が『フラナイ』の主人公だと知る。】
詳しいんじゃないのかいっ!
なんで知らんのよ!?
「ゲーム主人公の婚約者」って、乙女ゲームならたぶんメイン攻略対象でしょ?
【主人公は決められた行動はしないため、主人公の力は未知数だ。】
言うほど、そうか?(二回目)
ノベルゲーなら行動もせいぜい選択肢3つくらいでしょ?
ゲームを熟知してるんなら十分予測可能なのでは?
それとも「フラナイ」はスカイリムばりに自由度高いゲームなのだろうか?
【背に腹はかえられぬと露子は全勝を目指す断腸の思いで『あれ』を使う!】
せっかくの締めの一文なのに「背に腹は代えられぬ」と「断腸の思いで」が意味重複してるぅー!
「それでも全勝を目指す露子は決断する。『あれ』を使うしかない、と……。」
とかどうでしょうか?
名前について。
「ユーゴ・マカン・アルタイル」
「ルカ・コッコ・ニピア」
「マーク・ディオ・ルースジュニア」
長い! 覚えにくい!
???「最初の一文で立て続けに長い名前を書いて、読者を怖がらせましょう!」
いや、怖がらせちゃダメだよ!
本名が重要でないのなら、ファーストネームだけで良いです。
フルネーム出したいなら主人公たるルカだけで十分。
「……通称『フラナイ』の世界に、サブキャラである令嬢『ルカ・コッコ・ニピア』として転生する。
ルカはそのあまりの幼稚さからゲーム内外で嫌われたキャラクターであり、ほとんどのルートで婚約者ユーゴを巻き込み不幸な運命を辿るキャラクターだ。」
こんな感じで、一文の情報バランスを整えつつ書いたほうがいいと思われます。
最後に、個人的に残念な点を。
まず、改めてタイトルをご覧ください。
【乙女ゲーム フライヤーズ・ナイツ〜転生先が推しをダメにした悪役令嬢で最悪だ!〜】
よく見てください。
【推しをダメにした悪役令嬢】
お分かり、頂けただろうか?
つまり主人公の露子はユーゴが推しキャラなんです!
なんで!?
なんでそれをあらすじで書かない!
それは主人公最大の『癖』だろう!
主人公の目的はなんだ?
不幸な結末の回避……そうだね。
でも自分のためじゃないだろ!
推しキャラの! ユーゴが! 自分のせいで! 不幸になるのが! イヤだから! だ、ろうが!
なぜそれを書かない!
アピールしない!
推しへの圧倒的な『愛』!
それこそが読者の共感を呼ぶんじゃないんか!?
闘技大会で負けて優勝の道が断たれたとしても、ゲーム主人公に土下座してでも推しの不幸を回避しようとする……そんな主人公の必死さを描く作品じゃないんか!?
どうなんですか!?
以上です。
■追記ここから
本文。
タイあら感想と同様、冷静に見させていただきます。
まず物語への感想。
おお、ちゃんと主人公から推しへの愛を描いていますね。良いですね。
どうやら両想いのようですが、だからこそ憑依型転移モノの宿命である『人格上書き問題』について少し心配になってしまいます。
大丈夫か主人公。推しの想い人の人格乗っ取ってるけどいいのか?
コメディ寄りですし、あまり深く考えないでおきましょう。
そして、闘技大会について。
多分作者さんも工夫したところだと思うんですよね。元々のゲームシステムと、異世界における試合の仕組み、そして主人公がどう立ち回るかに整合性を付けなければならないので、大変だったと思います。
さて、批評と指摘です。
作者さんには、キツい内容になると思います。ご注意ください。
まず全体的な印象。
荒削り過ぎるなあ、です。
どこで何が起きていて、誰が何をしたいか、分かりはします。でも、お世辞にも理解しやすい文章とは言えません。分かりにくいです。
また、作者さんが作品の魅力を描く上で「何を書くべきで、何を書かなくていいか」という、要素の取捨選択がうまくできていないように思えます。
すると、どうなるか。
余計な情報を含む、洗練し切れていない文章の中から、
これは作品にとって、かなりの悪影響となります。
他にも細々とした懸念点が複数ありました。
上で挙げたものを含め、私が感じたその懸念点をリストアップしてみます。
・誤字がある
・「てにをは」が不自然な所が多い
・回りくどかったり、無駄に長い文章が多い
・長いのに、読点の無い文章が多い
・必要性の薄い説明が多い
・セリフが不自然だったり、キャラの言動に納得感がない
・そもそも納得できない描写や説明が複数ある
・一人称にしては客観的過ぎる描写が多く、視点が不安定
これらを総合したのが「荒削り過ぎるなあ」です。
そして、もう一つ。これはあらすじと、物語の内容にも関わります。
それは「あらすじから引っ張った『あれ』が、引っ張るほどのものでもなかった」です。
作者さんとしては渾身のネタだったのかもしれませんが、
「どんな切り札を使うのかな?」
と期待していた私としては、拍子抜けしてしまいました。ギャグ描写としても正直……。
まあ、もしアニメだったら多少は見れるシーンになるかもしれませんが、これは小説なので。
上で挙げたものを、いくつか個別に解説します。
まず誤字。
【あぁ~彼のこの笑顔を見るために生きていてのだと思う。】
【この『ルカ!』ってするし、言ってしまうお嬢様として私は生きていかなけれらばならないのか~?】
【あぁ~彼のこの笑顔を見るために生きていてのだと思う。】
直しましょう。推敲は大事です。
【衝撃の影響で働かない頭でも彼の顔は親の顔よりも見たことある顔だと判断出来る。】
怒涛の「顔」三連発。かつ読点がなく、ラップみたいな文章になってます。
読点を打ちましょう。それだけで文章にリズムが出て、読みやすくなります。
【物凄く聞き覚えのあるこの声はルカ・コッコ・ニピア嬢?】
「自分の声」は、他人と自分の耳で聞こえ方がまったく違う……というのは有名な話だと思います。今の主人公の身体は「ルカ」のものですから、主人公の知っているルカの声とは違って聞こえるのが自然なのではないでしょうか?
【「今のは女性にしかない発作かい?」】
【「心配なさらず~」】
発言としても会話としても不自然すぎるように思います。主人公が地の文で「どこで学んだのか分からない中途半端な知識の言葉」と言っていますが、言葉の問題ではなくTPOの問題ではないでしょうか?
「風邪でもひいてしまったのかい?」程度ならともかく、「女性にしかない発作」とは? 生理のことを言いたいのでしょうか?
なんにせよ、ユーゴがそれを知ってどうするつもりなのかが分かりません。
会話として、
「気分は悪くない?」
「大丈夫ですわ」
に続くなら、
「念の為医者に診てもらおうか」
とか
「ならいいけど、体調が悪いなら無理せず休んでくれ」
の方が気遣いとして自然に思えます。
主人公も主人公で、気遣いの姿勢を見せてくれた推しに対して「心配なさらず〜」は雑すぎませんか。なんならあしらっているようにも聞こえます。中身がアラフォーだからでしょうか?
推しの顔が近い状況なら、
「あ、あの、本当に大丈夫なので……!」
みたいに戸惑いつつ言うと、私には自然に感じます。
【私もだ。】
ルカが嫌悪されている、という文章を受けての文章。短いながら、読んでて最もインパクトがありました。悪い意味で。
たぶん、「多くのプレイヤーがルカを嫌っている」「私も(嫌っているうちの一人)だ」という意味で書いたんじゃないでしょうか?
でもこれ、「嫌悪されている」を受けて「私もだ」と言ってるようにしか読めません。露子……お前、そんなに嫌われてるんか?
「多くのプレイヤーがルカを嫌っている。私もその一人だ」
とかなら問題ないと思います。
【先程の会話も言わばユーゴ様を戦闘前にやる気やステータスの向上、『フラナイ』に限らず様々なゲームで使われる用語で言えば、フラグを立たせるために必要なことだと思われる。】
捻れているように見えますが、おそらく「てにをは」や構成がおかしいのが原因です。他にもこの文章には「長すぎる」「必要性の薄い説明(フラグについて)」「分かりにくい」など複数の問題があると思います。
悪い点をあげつらうのはこのくらいにして、建設的なフィードバックを。
まずは基本。
「一文一意」
「語るな、描け」
「副詞と受動態は、なるべく使うな」by スティーブン・キング
これを意識してみてください。
……。
そろそろ、好きにやってもいいですか?
いいよね?
……すまねえ! もう我慢ならねえ!
■
「危ない!」
その声とともに、誰かが私の身体を抱きとめる。
……頭がぐるぐるする。
見慣れない床に、徐々に焦点が合う。
ここはどこだ? そもそも何が、どうなってるんだ?
「急に倒れるなんて……大丈夫かい?」
やけに聞き馴染みのある声に、私は顔を上げた。
「……!」
ウソ……!
私を心配そうに見つめる、この人は……。
「ユーゴ……?」
金髪碧眼の端正な顔に、トレードマークのポケットチーフは、見間違うはずもない。
私の推しの
目の前で、生きて、動いていた。
立ち絵じゃない推しの顔が、スチルでも見たことのない生の表情を浮かべる。そこには優しさと、少しの困惑。
「僕がどうかしたのかい? ルカ」
ああああ〜、この声〜。
耳が幸せ〜。
……ん? ルカ?
ルカ、ですって!?
「る、ルカって、私のこと?」
「当たり前じゃないか。君はこの僕の婚約者、ルカ・コッコ・ニピアだろう」
「え、ええ……」
違う。
私はルカじゃない。
私の名前は竜崎露子。少年漫画とゲームが好きなだけの、普通のアラフォー女性……だったはずだ。
……まさか。
まさかここは。
「ちょっと失礼、ユーゴ……様」
「おっと、もう立って平気なのかい?」
「ありがとう、大丈夫……ですわ」
見回せば、今いるのは小さな石造りの部屋。
あるのは木製のイス、剣や槍などの武器、訓練用の木人形など。
「ルカ、何をしてるんだい?」
私は壁際に立った。たぶん、ここだ。
「ユーゴ、様。ちょっとそこに立って……下さらない?」
「え? ああ、いいけど」
「そう、それと右手を腰に、あと左手を首の後ろに……痛めた首を押さえる感じで……あと表情を物憂げな感じに」
戸惑いながらも、ユーゴは言う通りにしてくれる。
「難しいな。これはいつもの、ルカのおまじないかい?」
うん、やっぱりユーゴだ。
そう思いながら、私は両手の親指と人差し指で長方形を作り、即席の
「っ!」
見慣れたゲームのプレイ画面と同じ背景、同じキャラ、同じ構図が、そこにはあった。
間違いない、ここは、私の大好きな乙女ゲーム『フライヤーズ・ナイツ』の世界だ……!
■
一文一意!
一人称を活かした描写!
自然な会話!
語らずに、描く!
それを実践したつもりだ!
あと最後!
最後が気になるから書かせて!
いや、書かせろ!
■
……連打だ。
フライヤーズ・ナイツの応援は、ボタン連打でヒロインのモーションが変わり、効果が上がる。
この世界にボタンはない。
でも、やるしかない。
『あれ』を。
全身全霊、全力で!
「ユーゴ様!」
見るからに士気の低いユーゴがこちらを見た。
ルカは応援ボイスが耳につくことでも、不人気だった。私も、キャラ個別音声をオフにしていたくらいだ。
今は、オフにはできない。
でも、ユーゴのためだ!
観衆よ、マークよ、そして私じゃない主人公よ!
見てなさい!
アラフォーだって、推しのためなら……!
なんだってできると!
「ユーゴ様っ♪ 元気を出して♪ ユーゴ様♪」
おらおらおらおら!
連打連打連打連打!
応援応援応援応援!
士気上がれ上がれ上がれぇーっ!
「勝利の魔法をあなたの胸に♪ ルーッカルッカルッカ ルッカルカ♪」
両手で作ったハートの中で、沈んでいたユーゴの顔が……。
咲いた!
あっ、好き。
「きゃああああユーゴ様ぁ! 愛していますわぁ〜!」
ユーゴが背を向け、高々と右手を突き上げた!
「我が愛しのルカ・コッコ・ニピアよ! 見ていてくれ! 必ずや、勝利の栄光を君に!」
応援はもう、続けられなかった。
続ける必要もなかった。
涙が、溢れた。
ああ、推しが……。
推しが目の前で……。
生きてる。
動いてる。
輝いてる……!
■
『あれ』で散々読者に期待持たせたんなら、この位やらんかい!!
タイあらで言ったな!
推しへの圧倒的な『愛』!
主人公の必死さ!
それこそが読者の共感を呼ぶんじゃないんか、って!
作者!
あんたが作品で描きたかった『愛』は、情熱は!
こんなもんじゃないでしょ!!
それをドバーっと出さんか!
荒削りなのにちまちまノミ入れてんじゃねえぞ!
ガツンと一発ツルハシ入れて、魅力という名のでっけえ原石晒してみんかい!
小説のお作法なんてその後考えればいいんだ!
恥ずかしがってる場合じゃねぇぞ!!
分かったか!!
以上です。
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