かくれんぼ
夜影 空
読切
「おーい。」
何も返ってこない。
「おーい!」
カラスの鳴き声のみ返ってくる。
「おーーい!」
どこに行っちゃったの?
「もう、帰っちゃったのかな……。」
私は、見知らぬ土地でひとりぼっちになっていた。
・・・
「おーい、起きて。」
「んー……」
「先生に怒られちゃうよ。」
「へ?」
見ると、先生がいつの間にかこちらを向いていた。
「えへ。」
その時チャイムが鳴る。
「気をつけー礼。」
『ありがとうございましたー。』
途端に教室が騒がしくなる。カバンを持って変える人間や、雑談に花を咲かせる人間。そういう私は隣の子に話しかけられる。
「ねぇ、最近神隠しが増えてるみたいなんだよね。」
「神隠し?」
「そ。怪異が住まう土地に行ったって子がいてね、怖くなっちゃった。」
「ふーん。」
神隠し、かぁ。
「ま、そんなのオカルトでしょ。信じたって意味ないよ。ほら、帰ろ。」
「そうだね、うん。帰ろー。」
教室内での友達はこの子しかいない。この子とは拾ってくれた時から一緒だ。この子と同じ人間。あの日に、初めて出会った。お母さんとお父さんは、と聞かれたが、私は知らない。物心がつく頃にはいなかった。
「今日も疲れたねー。」
「そうだね。」
近道となる路地裏に入る。
「見いつけた!」
聞き覚えのある声がした。彼女が一足先に振り向く。
「きゃーー!!」
「わ、見つかっちゃった。……久しぶり。」
「ねぇ、何あれ!?」
「え?赤いスライムだけど?」
「か、怪異じゃ……なんでそんな落ち着いてるの!?」
「友達だから。みんなー!ただいまー!」
ようやく帰って来れた。そっか、怪異って呼ばれる存在なんだね。じゃあ、触手のあの子も……あ、来た。
「ぎゃーーー!!」
「おっかえりー!その子は食べ物?苗床?」
「どっちも違うから。」
「え、あ……。」
隣の子は失神しちゃったよ。仕方ない。
「私の家は残ってる?」
「残ってるよー。ついてきて。」
「ん、ありがと。」
多分、神隠しというやつなのだろう。私は今まで神隠しにあっていたんだ。もうあんな人間ばかりいるところには行きたくない。一生この子と過ごすんだ。
「ふふふ……。」
「嬉しそうだね。」
「帰って来れたしね。この子とここで過ごせると思うと笑いが……ふふふ。」
「えー、僕にも少しちょうだーい!」
「だめ。すぐ女の子を壊しちゃうでしょ。私だって壊されかけたんだから。」
「あの時のことは謝るからー!」
「それでもだめ!この子は私のものなの。」
「ちぇー。」
「着いたよ。」
「ありがとー。」
数年前と何も変わらない家がそこにはあった。
「じゃーね。」
「うん、ばいばーい。」
私のかくれんぼは終わった。この子のかくれんぼが始まる。ずっと、隠れ続けないとね。
「ただいま。」
かくれんぼ 夜影 空 @koasyado2
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