毎日読める短編小説
アガタ
第1話 魔法の多い季節
9月は魔法の多い季節だ。
万聖節は近い。道々にはかがり火が焚かれ、聖者や天使、悪魔や妖怪が夜、練り歩く。
そのささやき声が、臥所に眠る子供達の耳にそっと忍び込む。
「夜は楽しや」と、手招きして、化生の者どもは子供達の魂を攫って行く。
子供は、まだ人よりも化生に近い。彼らの魂は簡単にその体を抜け出せる。
北風の姿をした天使と悪魔が、子供達と手を繋いで広場で踊る。
頃合いを見て冥界に連れて行ってしまうつもりだ。
宴はたけなわで、さんざめく化生の者共と子供達の笑い声が入り交じり、広場は止まらないメリーゴーランドのように陶酔が支配していた。
その時だった。
突然、巨大な白馬が一騎、メリーゴーランドの輪の中に乱入する。
輪が崩れ、驚いたみんながわめき声を上げてめいめい白馬を見上げる。馬上には白い服を着て、白いひげをなびかせた白髪の魔法使いが乗っていた。
ういきょうの茎で出来た杖を振るって、彼は言った。
「朝が来る!朝が来るぞ!」
そして、そのういきょう杖で、天使や悪魔の頭をポカリポカリと打って回った。
化生の者共は大慌てで四方八方に逃げだしていく。
子供達の魂は手を離れ、ふわりと体の元へと戻って行った。
朝には、何か楽しい夢を見たと思うだろう。
そう言うものが、9月の魔法です。
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