愛の価値が可視化された世界で、「普通」を問い直す物語
- ★★★ Excellent!!!
「愛」が数値化され、不足すれば“病人”とされる世界。この斬新なディストピア設定こそが、最大の魅力!
この特殊な世界観を巧みに利用し、現代社会への鋭い風刺を描き出しているところがめっちゃ良い。国民総愛情量(GNA)という指標に振り回される社会は、行き過ぎた成果主義や同調圧力のメタファーとして見事に機能していて、医者から心ない言葉を浴びせられ、社会不適合者の烙印を押される伊織の姿は、マイノリティが抱える生きづらさと重なり、胸に迫るようなもの。
伊織が同じLoLs患者であるサンドさんと過ごす時間の中にこそ、本作のテーマが凝縮されているように感じられました。恋愛感情や家族愛といった紋切り型の「愛」ではない、ただ共にいてラーメンを啜り、下らない話で笑い合う関係性。社会が定義する「愛」を持たないはずの彼らが見せるこの穏やかな繋がりに、私たちは人間関係の根源的な温かさを見出す必要があるかもしれません。
「愛とは何か?」という普遍的な問いに対し、既存の価値観に捉われない新しい答えの可能性を示してくれる、思索的な一作です!!