2周目って無双できるはずでは?〜人生2周目の悪役令嬢は絶望中〜

ゆめの

1話目

「立て」


小さな窓から見える空が橙色に染まった頃。

私は小汚い男__一応看守長らしいが__に蹴られながらフラフラと立ちあがった。


「さっさと歩け」


飽きるほど聞いた棘のある低い声が耳を突き刺す。

なぜかこの声を聞くと体がビリビリと痺れる。

その痺れに耐えながら足をゆっくりと前に出す。

いつも通り石が散らばっており、角張った小石が足に刺さる、


「い、"っ"」


そう声を上げるも前を歩く男__看守長なんて呼ぶものか__には

届いていないらしく、無言でカツカツと音をたて進んでいく。

少しずつ距離が空くのを感じながらも、ゆっくりとそしてできるだけ

石を踏まないように気をつけ進んでいく。緩いスロープを登ると男が立ち止まる。

少しずつ近づき恐る恐る彼の奥を見ると埃が溜まった階段が見える。


「ここからは一人で行け」


そうぶっきらぼうに言葉を放つと靴を雑に投げ捨て、面倒くさいという顔で指を

指す。「靴を履いて登れ」と言う意味だろう。その通りに私は裸足のまま靴を履き

埃を吸わないよう手で口を覆いながら階段を登る。


「がん、、がん、、」


一段登るたび不気味な金属音が鳴り響く。目をぎゅ、と瞑り進んでいくと

ざわざわと民衆の喋る声が聞こえる。やはりここで処刑されるのだろう。

少し瞼の裏が明るくなり目をそっと開ける。そこにはかつて愛していた男

「クレイド・ライナー」がいた。


「汚らしい」


そう呟いた目はまるで汚物を見る様な軽蔑した目線であった。

「怖いですぅ」と鳥肌が立つ程の甲高い声で彼に近づく女は「アンナ・レイニー」

クレイドの隣に立つ為、当時の婚約者であった私に罪を被せた女だ。


「きゃっ、睨まれたぁっ」


気持ち悪い。虫唾が走る。軽く目線を逸らすと看守らが私の腕を掴み、

後ろに結びつける。それと同時に背中を押し、民衆の前のステージに

立たされる。__実際転んでいるが、、、言葉のあやというものだろうか__


「皇太子殿下万歳!!」


彼が私の横に立つと民衆がそう叫び手を上げる。


「これより、私の妻になるアンナに危害を与えた上、黒魔術の使用を目論んだ女

 『ライ・クレイ』の処刑を行う」


そう冷酷に言い放ち彼が剣を抜く。無言で私の背中に剣を突き刺す。


「かは"っ"」


猛烈な痛みと共に口に血が溜まる。意識が朦朧としてくる。


神がいるならもう一度やり直させてください_______




「次は成功できるかな」







、、、、、⁇






「ライ様」


誰かが呼んでいる。これは天国か。死後の世界など信じていなかったのに。

重い瞼を開けると、なぜか王宮の専属メイド「アイ」がいた。


「アイ、、!?」


「ライ様、どうされたのですか?」


布団を剥がしそう尋ねる水色の瞳。吸い込まれてしまいそうな大きな目から

視線を外し、ベットから飛び降り鏡を見る


「あれ、、、、?」


、、私ふつうに生きてる


でも痛みはある、、


、、



「今日って何日?」


そう尋ねるとアイが驚いたように目をぱちぱちさせこう答えた


「4月24日、ライ様とクレイド様の婚約5年記念日でございます。」



、、あの日じゃん


冤罪吹っかけられた日じゃん


婚約破棄された日じゃん



、、、、、待てよ?


やりなおせんじゃん


サイキョーじゃん



なんか前より思考元気になったし





いっちょやってやるか!




(続く)




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2周目って無双できるはずでは?〜人生2周目の悪役令嬢は絶望中〜 ゆめの @01140424

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