第2話 たった1人の友人
「あの、すみません……どうしても行ってみたい俳優さんのイベントがあるんです。一生のお願いです!
付き合ってください! 」
たった1人の友人に、必死で伝えたのは自分の誕生日近くだった。
「いいよ。」
そっけなくも優しく、いつもの返事が返ってきた。
彼女は私の1つ年上だ。
12年前、失業者が通う職業訓練で、地元から逃げてきた彼女と、逃げることも許されなかった私は出会った。その時のまま、私は敬語を使う。
本当は大切な彼女を失うのが怖くて、どこかそれ以上は踏み込まないように、踏み込ませないように敬語を使うことで一定の距離を置いていたのかもしれない。
出会った時、彼女は最初の結婚をしていた。
黒髪ロングで背筋の伸びた容姿、何事にもはっきり発言する人だった。
話していくうちに年齢が近かったり、彼女が優しかったのもあって、私のことをとても気にかけてくれた。
その優しさに甘えて傷つけたり、散々振り回しても許してくれた。
一緒に出掛けたり、怒らせたりしながらも関係は続いていった。
それから、彼女の離婚が決まって県外へと出て行ってからは会う機会がなかった。
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