第3話 私の罪…

ブゥン

 金属音のような鈍い音が狭い箱庭に響く。

「何なんだよこれ。

 学ランヤンキーの奴ルールを破ったのか?」

 琥珀の体が細切れにされてどんどんと消えていく。

「だから言ったのに…」

 琥珀が突然姿を消した。

 ビビビビビビ

 赤と青のランプが点灯する。

 常設されていたテレビにある映像が映る。

「あいつ…

 トロッコのレールの上にいるぞ?」

 優斗が首を傾げながらテレビを覗き込む。

「でも俺らの透明な窓から見える風景には

 学ランヤンキーの姿は見えねえぞ?

 二つのレールにそれぞれ人間のたばがあるだけだ。」

マリが何か悟ったような顔で喉を震わせながら必死に声を絞り出す。

「もしかしてうちら以外にもトロッコ問題に参加しているチームがいるんじゃないの?

 うちらとは別の場所のレールに琥珀は生贄として配置されたんじゃない?

 このままだと琥珀死んじゃう。

 助けないと。」

手足を拘束された琥珀はレールの上でジタバタと体を動かす。

「ゔ〜 ゔ〜 ゔ〜。」

 琥珀は顔に涙を流しながらこちらの方を見ていた。

「うわ あいつしょんべん漏らしてるぞ…

 こりゃ本当にまずいかもな…」

 優斗は頭を掻きむしりながら急いで案を考える。

 ガタンガタン ガタンガタン

 トロッコがものすごいスピードで琥珀に迫っていく。

「ねぇ優斗どうするのよ。

 このままだと死んじゃうって

 早く何か案出してよ。」

 マリが泣きながら優斗にしがみつく。

「そんなん言われたって無理だよ…

 小太郎は何か案はないのか?」

 小太郎は俯いたまま

「あっても琥珀は助からない…

 僕たちもやがて死ぬんだよ…」

 小さくそう呟いた。

その時だった。

「おい、画面の様子が変だぞ?

 琥珀の体がまた細切れになってるぞ」

 ブゥン

 先ほどの金属音がテレビ越しに耳に直撃する。

「う、嘘だろ?

 おい、琥珀がいた場所に別の少年が立ってるぞ!」

 少年はテレビ越しに泣きそうな顔を抑え込みながら

 こちらを見ていた。

「あいつ誰だよ…

 なんで琥珀が消えてよくわからない少年がレールの上に立ってるんだ?

 しかもあいつこっちに気づいてるみたいだぞ?

 あんな泣きそうな顔で無理やり笑顔をつくられても

 偽物にしか見えないよ。」

 優斗が不思議そうに少年を眺めてると、後ろから馴染みのある声が聞こえた。

「あれ?なんで私生きてるの?

 トロッコに轢かれたんじゃ…」

グシャッ

 何かが跳ねられた音がテレビ越しに響く。

「おいおい嘘だろ…

 あいつ轢かれたぞ…」

 優斗は後退りをしながら小太郎とマリの目を隠す。

 ガッ

 琥珀がテレビに飛びつく。

「嘘…

 なんで?あの場所は私がいた場所じゃない…

 なんで知らない人が代わりに轢かれてるの?」

小太郎が静かに口を開く。

「入れ替わりシステムを利用したんだよ…

 あなたを助けるために

 あなたが転送された場所は別のトロッコ問題に取り組む

 チームだったんだよ。

 そこのレールに突然現れたあなたを助けるために

 彼は自分の命を犠牲にしたんだよ。

 僕たちだけじゃないんだ…

 トロッコ問題に参加しているのは…」

 小太郎は酷く怯えた様子だった。

「私が殺した…私が殺した…

 私が殺した…」

 琥珀が小さく震え始める。

 次第に顔が真っ青になり呼吸が荒くなり始める。

 ビビビビビ…

 その時突如アナウンスが流れ始める。

 【トロッコが中間地点を通過しました。

 タイムリミッドまで後半分になります。】

ガタガタガタ…

 トロッコの音が次第に大きくなっていく。

「とりあえずもう時間がない。

 とりあえずレバーのところに集まろう!」

 優斗は酷く焦った様子でみんなを集める。

 小太郎は酷く絶望した様子で動かない。

 琥珀は震えていて、とても動けるようには見えない。

「今は優斗とうちしか動けないみたいだね…

 とりあえず情報だけでも集めない?」


「そうだな。

 トロッコがどちらの方向に初期位置が決まってるのか。

レールに敷かれている人間はそれぞれどんな人間なのか。

 とりあえずここら辺だけでも確認しておこう。」

 

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トロッコ問題 あなたはどちらを選びますか? 欠陥品の磨き石 磨奇 未知 @migakiisi

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