こんな僕でも恋がしたい!

欠陥品の磨き石 磨奇 未知

第1話幽霊って僕のことだろうか…

日光が蝉の音を引き連れて教室中を包み込む。

 教室中が金色に輝き始める。

 僕は教室の端の席で窓越しに空を眺めている。

 日光の光が僕以外の人間を嫌味のように明るく照らす。

「僕に光があたっても意味ないもんな…」

 僕はため息をつきながら、窓を閉める。

 密閉された教室の中で僕は耳を澄ませる。

 ミンミンミンミン…

 蝉の声が微かに僕の耳に響く。

 僕は心臓の痛みを抑えながら目を瞑る。

「僕は君が本当に羨ましいよ…

 人間は叫ぶだけでは存在を認めてくれないからね。」

 僕は俯きながら、教室の隅で小説を広げる。

 先程の蝉の声が嘘のように、教室中に子ども達の騒めき声が響き渡る。

 僕は両耳にイヤホンをしながら小説のページを捲る。

 友達のいない僕は小説を通じて擬似的な会話を行う。

 小説を友達だと言い張る自分の姿はなんとも滑稽で醜いものだ。

 教室中の至る所でクラスメイトが会話をしている。

 周りの楽しそうに喋る顔が嫌味のように僕の心臓の奥に

突き刺さる。

 一人ぼっちの僕にとってこれほど耐え難いことはない。

 哀れんだ目や蔑んだ目がいつ僕を襲うのかといつも怯えている。

 こんな惨めな姿をしているのに周りは僕の存在に気づいていない。

 幽霊だと思われているのだろうか。

 皮肉なことに幽霊みたいに扱われているおかげで

 滑稽でダサい姿を見られずに済んでいる。

 こんなみっともない僕だが実は好きな人がいる。

 幽霊の癖に性欲は人間並みにあるみたいだ。

 彼女のために外見を磨いたり内面を磨いたりはしないが彼女のことが好きだ。

 なんだそんなもんなんかと思われるかもしれないが、

 僕以外の人間もそんなもんだ。

 努力もしない癖に相手から来てくれることを願っている姿はなんとも滑稽なことだ。

 こんなクソみたいな考え方をしているからか一向に彼女ができない。

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