街角のスターチス
セツナ
プロローグ『スターチス』
少し肌寒い風の吹く朝の8時。
徐々に空気も暖かくなってきて、街全体が活動を始めていく様子を肌で感じるこの時間が私は好きだ。
春先の暖かい風が吹き抜ける。咲き揃ってきている桜の花びらも少しずつ風と共に飛んでいき、その様子を目で追う。
「あぁ、もうすっかり春ね」
気が付けばもう4月だった。どうりで傷一つない綺麗なランドセルを背負った小学生が多いはずだ。
ランドセルを背負い、友達を追いかけるように駆けていく小学生へ「おはようございます」と手を振りながら、お店の軒先の日よけとなるテントを棒を使って出していく。
そして春風に足を取られないように気を付けながら、店先に綺麗に咲き誇った花鉢やプランターを並べていく。
そうして全ての花たちを店先へ出し終えると、晴れ晴れとした気持ちでお店の看板を見つめる。
そこには英語で『Statice-スターチス-』と書かれている。手塩にかけた花達を置いている私の自慢の店だ。
誰かへ想いと花を贈る人たちのために、この店が力になればいい、と私は思っている。
日が昇りきってしまう前に、花達に一度水を与えておかなければ。
そう思い水差しで花へ水を与える。
水を花にかける私のそばを、元気な小学生たちと桜を運ぶ春風が通り過ぎていく。
そう言えば、今日は土曜日だ。
そろそろあの人が来るはずだわ――。
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