第4話 王都へ
「あーあ、アルハスラちゃん、寂しそうだったよ? ホント、マスターは罪作りな男だねぇ」
「変な言い方はやめろ、エレシュキガル。アルハスラはもう大人なんだ。俺がいなくても大丈夫だ。さっさとカルネシアへのゲートを開け」
ルーラオムの中では、村民は村の外に出られない。それは神働術師とて例外ではなかった。だが村の外に出た以上、エレシュキガルのゲートも潜れるはずだ。
「はい、じゃあカルネシアへのゲート、開くね」
空間に黒い亀裂が入り、ゲートが顕現する。アルダヴァーンと四柱の神たちは、ついに新たな一歩を踏み出した。
まだ朝だというのに、市井には活気があふれていた。
「ここが王都カルネシアか……」
アルダヴァーンは、高く聳え立つビル群を見上げる。こんな様子ではおのぼりさんだと一発でバレてしまうだろう。
「フッ、ここでなら楽しく稼げそうだな」
アルダヴァーンは都会の空気を思い切り吸い込んだ。
「あ、そうだマスター。換金額についてだけど、正味売却価額、取得原価、再調達原価、機会損失額等を、場合によって使い分けるかんじでいくからよろしく」
相変わらず空気の読めないメルキオールは、唐突に説明を始める。
「しょ、しょーみ?」
「あらら、そっから説明しないといけないかんじですか。まぁ、マスターは細かいことまで気にしなくていいですよ」
「いいや気にする。エレシュキガル、お前はしょっちゅうゲートを開いて色んな国を回っていたな?」
「それが何か?」
「経済学、会計学の書籍を買ってきてくれ。入門書と専門書、両方を」
「おやおや、まずは入門書だけでいいんじゃないの?」
エレシュキガルは呆れたように問うてくる。
「俺の理解力をナメるな。三日でマスターしてみせる」
「フッ、まぁマスターは天才だしね」
エレシュキガルは付き合いが長いので分かってくれたようだ。一方のメルキオールは困惑している。
「え、さっき言った用語の意味も分からなかったマスターが、いきなり三日間の勉強だけで専門書を理解しようというんですか?」
「まぁ見てなって」
エレシュキガルは自慢げに言い残してゲートの向こう側へと去って行った。
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神働術師の換金無双~換金能力で悪徳錬金術師を倒します~ 川崎俊介 @viceminister
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