振られてしまった負けヒロインを全力で支え続けていく
榊原イオリ
第1話:幼馴染の男の子に振られた女の子
午前中の授業が終わり、ちょうど今はお昼休みに入った所だった。
「それで沙紀? 話したい事って何?」
「ユウ君……あ、あのね……」
ここは学校の屋上で、その周りには今喋ってる男女の二人組みしかいない。
今喋っている女の子の名前は
ヘアスタイルは黒髪のセミロングヘアでポニーテールにしており、身長は155センチくらいのスレンダー体型。趣味は料理と読書であり、部活は料理部に所属している家庭的な女の子だ。
また、性格は温厚でとても優しい性格をしているので、クラスの皆から慕われてる明るくて素敵な女の子だった。
それに対して、今早見さんに喋りかけられてる男子の名前は
見た目は清潔感のある黒髪ショートヘアで、身長は170センチ前半の普通体型。部活はやってないが生徒会に所属している。
そんな彼の性格は気さくで明るく、また、困っている人を見かけたら放っておけないという主人公気質な男子生徒だった。
そして実はこの二人は幼馴染同士なのである。家がお隣同士かつ、互いの両親がとても仲が良かったため、幼少の頃からこの二人は毎日のように一緒に遊んで過ごしていたらしい。
「……私……ユウ君の事が好き……なの。 だから……私とお付き合いしてください……!」
そんなわけで子供の頃から非常に仲の良い幼馴染同士の二人だったのだが……ついに今日、早見さんが黒木に告白をしたのだ。
早見さんは顔を真っ赤にしながらも本気で黒木に愛の告白を伝えた。
「……ごめん、沙紀」
「……っ……」
しかしその告白は実らなかった。早見さんは黒木の返事を聞いて小さく震え始めていった。
「俺、付き合ってる子がいるんだ。だから……沙紀とは付き合えない」
「……そっか……うん、わかった……あ、あのさ、ユウ君が付き合ってるのって……篠原さん……だよね?」
「あぁ、知ってたのか?」
今話に出てきた
「ううん、付き合ってる事までは知らなかったけど……でもなんとなくだけど、そうなのかなって思ってはいたから……」
「そっか。やっぱり幼馴染のお前には隠し事なんて出来ないもんだな」
「あ、あはは……うん、そうだよ……だって私達は幼稚園の頃からずっと一緒にいたんだから。だから私は……ユウ君の考えてる事なんてすぐにわかっちゃうんだからね……」
早見さんは身体を震わせながらも笑顔で黒木に向かってそう言っていた。なんというか、とても気概のある女の子なんだと思った。
―― プルル、プルル……♪
そしてその時、黒木のスマホが鳴りだした。どうやらLIMEのメッセージが届いたようだ。黒木はスマホを取り出し、その届いたメッセージを確認した。
「……ごめん、沙紀。俺、もういかなきゃ……」
「篠原さんから……だよね。 うん、早く行ってあげて」
「あぁ、ありがとう。 それじゃあ……」
そう言って黒木は早見さんを一人残して屋上から出て行こうとした。でも……出て行く途中で足を止めて、早見さんの方に顔を向けてもう一度喋りかけた。
「沙紀、告白本当にありがとう! 凄く嬉しかったよ! 告白は受け入れられなかったけど……でも俺達はこれからもずっと親友でいような!」
「……うん、もちろんだよ、ユウ君……」
「あぁ、ありがとう! それじゃあな!」
「……うん」
そう言って今度こそ黒木は屋上から出て行った。そして屋上には早見さん一人だけになり、そこからしばらくの静寂が訪れていた。
「……はは」
しばらく経ってから早見さんは突然と小さく笑いだした。でもそれは決して幸せな気持ちから出る笑いではない。
「……あーあ……こんな事なら、さっさと告白しとけば良かったなぁ……あはは……」
そんな乾いた笑い声はすぐに消えて、また屋上には静寂が戻った。でも今度の静寂は長くは続かなかった。
「……ぅぁ……」
そしてその代わりに……。
「……うぅ……うあっ……ぐすっ……うぅ……」
早見さんは涙を溢しながら小さく……本当に小さく嗚咽を漏らしていた。出来る限り声を殺しながら泣いているその姿は本当に悲痛な姿だった。
(……ヤ、ヤバい……)
そしてそんな悲しすぎる現場を偶然にも目撃してしまった愚か者が、この屋上にはもう一人だけいた。
(ど、どうすればいいんだ……?)
それが俺こと
今日はあまりにも眠くてどうしようもなかったから、俺は授業が終わったらすぐに屋上に来ていたのだ、もちろん昼寝をするために。
それで屋上に来てみたんだけど、今日はいつもよりも日差しが強かった。だから俺は屋上に設置されてる給水タンクの裏で昼寝をしようと思って移動したんだけど……そのタイミングで早見さん達が屋上に入って来てしまった。
(くそっ……こんなことなら早見さん達が来た時にすぐに帰っておけばよかった……)
給水タンクの裏側は早見さん達には死角になっていたため、俺の存在はバレずに告白が進んでしまったのだ。
「うぅ……うぁ……ひっぐ……」
昔から人の恋路を邪魔すると馬に蹴られるって偉い人が言っていた。だから俺は突然始まってしまったその告白を壊さないようにする事で必死だった。
俺は絶対に物音を立てないように、給水タンクに背中を預けて体育座りをしながら、終始空気になるように徹していた。まぁ様子見をしてた時点で十分馬に蹴られる案件なんだけども……。
でも内容が思っていた以上にハード過ぎて俺にはキャパオーバー過ぎた。むしろここまで物音を立てずに見守って入れた自分を褒めてあげたいくらいだ。
そして出来ればもうこれ以上何も起きずに……そのまま早見さんにも屋上から出て行って貰いたいんだけど……。
「……ぐすっ……ひっぐ……」
―― スタスタッ
早見さんの足音が聞こえた。あぁ、これは早見さんも屋上から出て行ってくれるようだ……いや……あ、あれ?
(ちょ、ちょっと待ってくれよ!? なんか足音がこっちに近づいてるんだけど!?)
スタスタという足音がどんどんとこちらに近づいてくる。早見さんは給水タンクの方に来てる! な、なんでこっちに向かって来てるんだ!?
(ヤバイヤバイヤバイ!)
しかも俺には逃げ場が無い。だって給水タンクの先は屋上のフェンスがあるだけだ。だからここから屋上を脱出したくても……給水タンクの裏から出ようとしたら絶対に早見さんと出くわす事になる。
いやこんなのどう足掻いても俺には絶望しか見えないんだけど、それでも俺は息を殺しながら身を潜めるしかなかった。まぁでもそんな努力も無駄に終わって……。
「ぐすっ……ぐすっ……えっ……?」
「……あっ……ど、どうも……」
そうして俺達は目を合わせる事になってしまった……その瞬間っ!
―― ドンッ!!!
「……っ!?」
早見さんは体育座りをしていた俺の顔に当たらないギリギリの所に狙って華麗なヤクザキックを放ってきた。そしてその蹴りが給水タンクに当たり、ドンッ……という恐ろしい打撃音が鳴り響いたのであった。
……正直俺の顔面が蹴られるのかと思ってメチャクチャビビった。
ちなみにその瞬間。早見さんが俺の正面からヤクザキックをしてくれたおかげで、早見さんの可愛らしいパンツが見えてしまったのだけど……怖すぎてそれどころじゃなかった。
「どこから……見てたのかなぁ……?」
「え、えぇっと……その……最初から……です」
そしてこれこそが俺と早見さんの最初の出会いだった。
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