26話ですます〜。
「そんなに急いで、どこか行きたい場所でもあるの?」
はい、お便りの時間になりました〜。なら、しっかりと応えないといけないわね。どんな感じに返したらいいと思う?なんでもいいんじゃない?
「あるある!歩きたい場所ならある!」
1位よ! 100点ね 9.99点!
完璧な得点を叩き出しちゃったかな〜?
「歩きたい場所?行きたいじゃなくて?」
全っ然伝わってないじゃない!ありゃ?おっかしいかしら?でも、歩と行が違うだけだから、9割は合ってるから 大丈夫よ心配ないわセーフ!いいよね?
――というわけで、本日の秋音のラジオのコーナーのしゅ〜りょ〜のお時間!1時間後にお会いしましょう!
っとと、湊くんを置いてけぼりにするところだった
もう、走るの遅いぞ!歩いてるのは僕で、秋音は走ってるからだろ?なら、走るつもりで歩いたら解決じゃん!確かに、、秋音ちゃんって天才だね!
うわぁ〜!窓のお外に空飛ぶ猫ちゃんいる!……って、そんなわけないか。せめて鶏にしようよ
「そういえば、うちのクラスは文化祭どんな出し物をするの?」
なんだっけ、私Bわかる?知らないよ。秋音ちゃんBBは?さぁ、秋BBBが知ってそう?……秋音4Bが話したそうにしてる!?
「揚げアイスだよ!」
んーっと悩んだ姿で、秋音ちゃんはそう言うのであった!
分かるかな?もっと細かく乱切りにするとね。人差し指で頭をぐるぐる回して、頭に電波を送るの!そうするとね、みんなに伝わるの!そんな感じのポーズ?
「揚げアイス?なんとなく想像できるけど……アイスを揚げるの?どうやって?」
まあ、その辺は感覚というか?ほら、メロンソーダをクリームソーダにすると泡食べることになるでしょ?あれと一緒だよ。
「水と油だよね!放課後に家庭科室で試しに作るらしいから、食べに行こうよ!」
「いいn「ねぇ?頭を無にしようとするときって、逆にムムッって考えちゃわない?」
「え?あー……うーん。どうだろう?いや、確かにあるような……ムムッっとはならないような……」
必死に悩んでるね!……今はそうやって、頭の中をアタシのことでいっぱいにして!
私は秋音!
「ほら、早く行こうよー。ここは私の歩きたい場所じゃないの!」
よくある駄々っ子がお母さんの手か膝を引っ張って急かすシーン!
あらやだ、恥ずかしい!女装した湊くんなんて見たくない〜。
腕は組んでないよ?まだ、そこまでの仲じゃないからね!
じゃあどこを掴んでるの?手、正確には手首ね。わたしはスキップで移動してるよ。彼は転けそうになりながら歩いてる!
歩幅が違うと大変だよね。あ、私の事ね!
誰と話してるのって?……さぁ、誰だろうねぇ?
〜〜〜
「終点〜終点〜。第2中庭でーす!」
お荷物、傘、人格のお忘れにご注意くださーい!
「はい、お疲れ様。そんなに急いでどこに行きたいのかと思ったら……中庭だったのね」
湊くんは少し乱れた制服を整える。あと、息もね
その仕草を、私はじーっと見つめてしまう。
学生服にブレザー……彼はどっちを着ているんでしょうか?わたしがここで選べば、彼は答えてくれるのかな?
「……? どうしたの?なにかあった?」
「ううん、なんでもない。ただ……」
ためて〜ためて〜、ちょっと深刻そうに、悩みがありそうに、顔に影を作って眉を寄せて――
「湊くんが来ている制服が、学ランなのかブレザーなのか……気になっちゃって……。」
チラッと上目遣いで彼を見つめる。
ついでに、潤目にして――なんてこともない相談を、ちょっと深刻そうな顔で言ってみたら……どんな反応をするんでしょうか?
検証開始ー!
「おいおい、見てわかるだろ?」
襟を立てて、丈が長くて、靴はとんがってる。ポケットに手を突っ込んで、「なんか文句ある?」って顔。
なるほど……そうなのかー。うんうん、と頷きながら納得する。
……こういう強引なノリ、結構好きかもー?
「いえ、違いますよ。これが本来の僕です。」
学生服を第一ボタンまできっちり留めて、首元のホックも閉じてる。服装に髪型に乱れなし。
うん、アリだね。メガネとかクイってさせてそう……あ、した。
真面目な感じがあって、これは春香ちゃん好みかな〜。
「いや、今どき高校生はブレザーだろ?」
ネクタイ緩めて、シャツの裾出して、微笑んでウィンクしちゃう勢い。
うん、女慣れしてそ〜。
でも、夏海ちゃんだったらすぐに落ちてたんじゃない?
「普通に着るのが一番だよ?」
……おっと。ブレザーの下にパーカー着て、さりげなく個性出してるの、バレてるよ?
アニメとか漫画でよくある着こなし方。冬乃ちゃんと話合いそう。
「――さん!大丈夫?」
うーん……うるさいなー。今、いろんな湊くんとおしゃべりしてるところなのに。
「よかった……気がついた? 質問した後、急に倒れたからびっくりしたよ」
目を覚ますと私は、彼の腕の中にさっぱり収まってる。ゆらゆらと、まるでゆりかごみたいに揺らして、少し大きくて早口な子守唄。
校則通りの髪型。ネクタイもしっかり締めてブレザーもぴしっとしてる変わり映えのない。いつもの湊くん。
……うん
「湊くん……やっぱり、普通が一番だね」
「え? あ、うん。そうだね。それより本当に心配だけど大丈夫?」
目を閉じて――もう一眠りしようかな
劇の上でまた違う湊くんが登場する
味変は大事だよね〜。
「ちょ、秋音さん!?どっち!?ダメな方?いつもの気まぐれなの、これ!?」
彼の声は薄くなってくる
おやすみなさい〜。
〜〜〜
ここ何処?
背中に固い感触、頭の下にはちょっとだけ柔らかい感触。 腕のあたりには、ふわりと布のぬくもり。
もぞもぞと体を動かしていると――
「あ、起きた?大丈夫?痛いところとか辛いところとかない?」
「あの後、すぐに寝息が聞こえて安心したよ。ほんと、先生を呼ぶか悩んだぐらいね」
声は聞こえるけど右から左に抜けていくから意味ないよー。
「んーっ……」
寝ぼけたまま返事。目を擦ってゆっくりと体を起こしてみると、膝枕。ベンチ。彼のブレザーが、毛布みたいにかけられていた。
「誰か来るかと、ひやひやしたよ」
「立てそう?お昼休みもそろそろ終わるし教室に戻ろうか」
立ち上がろうとした彼の袖をそっと掴んで、小さなお願いする。
「ちょっと待って……走れば教室まで五分くらいでしょ?もう少しだけ、ここにいようよ……ね?」
湊くんは返事をしなかったけど、また座ってくれた。
私はあげていた顔を、そっと膝の上に戻す。
ズレたブレザーを、彼がそっと直してくれて、手のひらで影を作ってくれる。
あぁ、、
「本当に大丈夫? 今も秋音さんだよね?」
「大丈夫だよ。今、とっても幸せだから」
これは、ホント。
「秋音じゃないよ。秋音だったら、文字通り飛び起きてそうじゃない?」
これは、ウソ。
短く笑う声が聞こえてきて。
「確かに。……少し想像できるかも」
「でしょ〜? だから違うの〜。私でも、わたしでも、アタシでも、私でもないの」
これも、ウソ。
コロンと寝返りをうって、顔を隠す。
頭隠して、耳隠さず
「ありがとう。湊くんのおかげで、私たち、毎日が楽しいの」
これは、ホント。
「学校が楽しくないわけじゃないよ?それぞれ、自由に過ごしてるし。今のクラスは結構話しかけてくれるしね」
これも、ホント。
「私はね、交代しても見る聞く話すそれに、ちょっとした感情なんかも、覚えておけるの」
「仲のいい友達ができると、話が合わなかった時、すごくストレス感じちゃうの……特に、冬乃ちゃんはね」
「だから、協力してくれる人が欲しかったの。クラスに馴染んでなくて、口も固くて……他の私とも、ちゃんと仲良くできそうな人」
「そして……」どうして、君に話したかって?
「私たちに、普通の青春を送らせてくれそうな人」
私が、君に一目惚れしたからだよ
これは――
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