わたしの記憶

藤なな子

第1話 ハワイのお土産

小3の夏休み明けを忘れない。

時が経ち現在34歳、本日9月1日である。たまにふと思い出す、『根に持つ』という言葉が相応しい感情を小3の私はどんなふうに感じていたかは曖昧だ。

いや、羨望の眼差しで見ていたのだろうか。武中くん(仮名)が毎年恒例の家族でハワイ旅行へ行ったらしい。貧しい家庭に育った私はうらやましくて仕方なかったのだけれどそれは夢の夢だともわかってはいた。

武中くんは、何種類かの車のイラストが描かれた手さげ袋からそれを『ハワイのお土産』だと言って端の列から順番に配っていった。

横目で見るには、ボールペンの先端にカラフルな鳥の羽、のようなものがついていていかにもハワイらしさをそのとき感じた。

ーそれは、すぐに私だけを抜かし、その後淡々と配られ最後に担任の先生に渡されたのを見ていた、だけだった。

あの時どうすれば良かったのが正解もわからないが、小3の私には何も言わないのがいいなと思った。もしそれが渡し忘れていただけだったら。いやしいと思われるくらいなら伝えなくてよかった、などと考えたりもした。

毎年、夏になると思い出す記憶と言ってもいいだろう。いけない、今年もまた思い出してしまった。

それがいじめの序章だと捉えていいものであれば、だけれども。

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