山のある町

岸燈加

山のある町

平日と引き合う磁石が鳩尾にあって最近よく悪さする


花の名で呼ばずに花に名をつける 窮屈だった街が微かに


尊敬の色付きのレンズは高いけれど細部までよく見える


タップするとき特別な止まり木を見せてもらったような気がした


喋らずに伝わることの限界を伝える川と喉の冷たさ


恋人の心深くの歯車の一つひとつの意味を尋ねて


壁際にもたれるように山のある町に住もういつか苦しくなったら


退屈で本を鳥へと変えながらこれから先にも何かある気が


エスカレーターに乗る 前にいる人のリュックの英字が意味分からない


ひさびさの出席 胸に透明な小さな花束を準備して

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山のある町 岸燈加 @toka_kishi

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