第14話無くした思い出

「もうそろそろ機嫌を直しても良いのでは?」

「何が?」

「いやだって、チョコ貰ってきて怒ってるでしょ?」

「まあ半分は」

「やっぱり」

「でも、これを全て輝が食べなければ良いの、私が食べるし」

「そうですか、もう半分は?」

「怒ってるってより私の彼氏はもう十分に魅力があるのが分かったこと」

「そうですか」

「うん、こんなにチョコ貰って来るのは予想外だったし、これはいらないかな~」

「バックから柚葉さんがチョコレートを出した」

「え?」

「だって両手に余るくらいにあるんだし、良いかな~って」

「それとこれは別です」

「そう?」

「はい」

「じゃああげる、でも来年からは必要以上に貰わないことを誓える?」

「はい、神に誓います」

「なら良し」

そう言われて綺麗に梱包された箱を開けると真ん丸のチョコレートが入っていた。

「おお、頂きます」

「どう?」

「美味しです」

「ふ~ん」

満更でもない顔をするのでこれは毎年の楽しみになると思った。

「さあ、次が楽しみだね」

「え?」

「いやいや、お返し楽しみにしてるよ」

「ホワイトデーですか?」

「それ以外にないでしょ」

「分かりました、何が良いですか?」

「う~ん、じゃあ夜景が綺麗なレストランの招待状でも良いな」

「規模が違いすぎません?」

「良いじゃん」

「う~ん、まあ頑張ります」

綺麗な夜景が見えるレストランとは一体何処に行けば良いのか、これはリサーチをしないといけないなと思った。


翌日、休日なので起きたが二度寝をしようとしたら電話がかかってきた。

『起きてる?』

『なんだ、柚葉さんか』

『何だって何よ、私じゃ悪い?』

『いえいえ、会社からだと思って休日出勤はごめんだと』

『そう、今から着替えて来て』

『部屋にですか?』

『うん』

『分かりました』

電話を切って、着替えて眠い目をこすって部屋に行った。

「どうぞ」

「お邪魔します」


「それで何ですか?」

「今から出かけない?」

「何処に?」

「吉祥寺」

「吉祥寺ですか」

「うん」

「分かりました」


それから車で三十分くらいかけて移動して、駐車場から出た。

「何処行くんですか?」

「取り敢えず公園かな」

そう言って公園に向かい、散歩をした。

「覚えてない?」

「何がですか?」

「此処、初めてデートした所」

「そうだったんですね」

「うん、休みの度に公園に来てたよ。あの時は今みたいに好きにお金を使えなかったし、休みの時はこうやって、公園に来てた」

そう言いながら公園を散策した。

思い出を話しながら、こう言うのは自分の落としてしまった記憶を掴んで思い出す作業のように感じた。

「あそこのベンチに座ろうか」

「はい」

ベンチに移動して座る。

「そう言えばあの売店で買ったかき氷美味しかったな」

「今食べると寒いですね」

「そうだね、ブルーハワイ食べた時はベロが真っ青になったよ」

「まあお決まりですしね」

「そうでしょ、昔からブルーハワイが定番だったわ」

「なんか話聞いていたらかき氷食べたくなってきましたね」

「今の時期は売ってないでしょ」

「それもそうか」

「うん、なら甘酒でも飲む?」

「飲みます」

それから近くの売店で甘酒とたい焼きを買った。

「たい焼きどう?」

「美味いです、買わなく良かったんですか?」

「うん、でも一口頂戴」

「はい」


それから一時間くらい吉祥寺を満喫して、ご飯を食べた後はお互いに好きなアニメのキャラクターのグッズを買って家に帰った。

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