第3羽

【人間】

「うわ、眩しいな」


「ほら、もう起きなさい。いつまで寝てるつもりなのよ。」


ママがカーテンを開けたせいか。僕はまだよく開いていない目を無理やりこじ開けながらベッドから降り、歯を磨いて朝ごはんを食べた。


「今日はお友だちと一緒に流星群を見に行くんでしょう?まさか忘れたわけじゃないでしょうね?」


そうだ!今日は土曜日だった!今週流星群が見れるってニュースでやってて、友だちと一緒にそれを見に行く約束をしてたんだ。近所の沼に接しているとても大きくて見晴らしのいい公園に行く予定だ。でもまだ予定の時間までには十分な余裕がある。


「フレッド。学校の課題を終わらせてから行くのよ。そのためにこうやって起こしたんだから。先延ばしにしないでそういうのはパパッとやっておいた方がいいわよ。」


「えー、別に日曜日やればいいじゃん。」


「明日やろうは馬鹿野郎っていうでしょ。やだ、これ一度言ってみたかったのよ〜。」


「わかったよ。」


待ち合わせまでまだ余裕はあるし、時間を潰すくらいなら課題をやった方がマシだと思った。課題に取り組みながら午後のことを考えていた。楽しみだな。願い事はもう考えてある。


【鴨】

私はその眩しさに気がつくと、いつものように身支度を始めていた。この沼には私以外にも多様な動物が住んでいる。もちろん鴨も含んでいる。羽毛が痛んだり、嘴に汚れがついていては不恰好そのものだ。私は恥をかきたくないのである。


サッサッ

ツルツル


私は羽毛を整え、嘴や足の汚れをよく落とした。


ジャバッ

バサッ


朝に体いっぱいに水を浴びるのは非常に心地が良い。私のルーティンとでも呼ぶべきか。そうしているうちに、何やら遠くから一つの影が近づいて来るのが見えた。


「短暗さんよぉ。今日もいい天気ですな。」


奴は白田善蔵はくたぜんぞう。この沼のリーダー的存在だ。いわゆるベテランである。そして、白鳥だ。彼は信頼されているらしい。どうでもいいことだが。


「一体なんの要件で?」


朝からなんなんだ。早く帰ってもらいたい。私はこれから散歩をして朝のルーティンを完了させなければならないのだ。


「えーっとねー、最近さ、この沼の食料が減ってきていてね。悪いんだけどー、明後日あたりに沼の仲間たちと一緒に川の方へ食料を探しに行くんだ。だから君にも来てもらわないといけなくてね。それを伝えに来たんだよ。またこんな事になってしまって申し訳ないよ。」


はぁ。最悪だな。どうりで嫌な予感がしたわけだ。近頃沼は汚染されつつあったのだ。夏の強い日差しによって水温が暖められすぎていた。おまけに沼全体が栄養過多ときたものだ。食料が腐り始めるのは必然だった。私がここへ越してきた時期にも一度これが起きたのだ。深刻ではあるが、降水などにより水が入れ替えられれば事態は解決されるだろう。川は水が比較的綺麗であり、且つ食料の鮮度がいい。だがとても危険なのだ。流れが速いのである。いくら周りがいたとて自分自身は自分で守らねばならない。私に関係はないが。一歩間違えれば命どりになるだろう。しかし状況を考えるに仕方のない選択だ。


「私は一人で行動させてもらう。ではまた明後日。」


「そっ、そうか。じゃあまた明後日な。元気でやれよー。」


私は善蔵が言い終わらないうちに散歩をしに足を進ませた。全く面倒だが、とりあえず軽い運動でも行い気持ちを落ち着かせねば。私は沼の輪郭に沿って歩いた。すると街のビルのスクリーン上に何かが映っているのが見られた。


「流星群か?今夜見れるのか?」


その疑問は確信へと変わった。街を覗き込むなり、どこもかしこも流星群の映った多数のスクリーンがあらわになったのだ。


「明後日の憂鬱の前に少しばかり楽しむとするか。」


流れ星は久しく見ていないため、私は心臓が鼓動を打つのを感じた。願い事などくだらないので眼中にはなかった。




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