なだらかな軌跡

千坂ころも

なだらかな軌跡

妹によく似た頬の少年が私の視線に気づく 逸らす


早足で下り電車に乗り換えて過ぎ去る東京みたいな東京


すずなりにキーホルダーをぶら下げてすずなりにポニーテールが群れる


POPSでよく聞く名前の駅がありそのいずれもがただ駅である


車窓には街が流れる 少しだけ信じ切れていない地動説


路線図の四つの路線の並行はチェロ弦に似ていまCツェーにいる


制服は回数券のようだった もう何度目の夏かわからない


かたときも取りこぼされずふるさとへひとりで運ばれていく私だ


半年も帰らずにいてこの家のにおいをいまは嗅ぎ分けられる


春先の「行ってきます」のなだらかな軌跡の先で「ただいま」を言う

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