第四章 神社
美咲たちは急いで和樹に教えてもらった神社に向かった。
街の通りはがれきだらけで、崩れた電柱からは電線が垂れ下がり、風に揺れていた。崩れかけた建物の窓ガラスが風に鳴らされ、カタカタと不気味な音を立てた。美咲たちは、がれきをよけながら街はずれに出た。
「ここに、神社があるの?」
「確かにここにあったんだよ」
「あっ、あれじゃない?」
指さした方向には、確かに神社があった。
「行ってみるか」
和樹がそう言い、神社に向かって歩き出した。
「けっこう、急な階段だね」
登り始めてから美咲は汗をかいて水筒を取り出した。
「大丈夫?」
明菜が歩きながら言った。
「拓斗、そろそろ少し休憩しよう」
みんながリュックをおろして水分補給をした。水筒の冷たい水が喉を通ると、少しだけ体が軽くなった。けれど背後からじっと見られているような気配は消えない。枯れた幹が風にきしみ、低いうめき声のように響いて胸がざわついた。
休憩をそこそこに
「先へ行こう。立ち止まっている暇はないから」
拓斗が息を荒くしながら言った。
山道を歩いて、やっと神社についた。
鳥居の赤い色もすっかり褪せ、ひび割れている。境内に入ると空気はひんやりしていて、先ほどまでの街のざわめきとは別世界のようだった。
「やっと着いた~」
「じゃあ、さっきのメモの続きを読もうよ」
「大事なことが書かれているかもしれられないしね?」
明菜が美咲を見ながら言った。
「確か…『やつらは電気を追いかける。電気をなぜ追っているかは、だれにもわからない』」
「電気を追いかける?」
「だったら…さっき美咲が見えないのは電気を持っていないから?」
「そのことが本当ならば電気を調達しないと」
「なんで電気を集めないといけないの?」
「逆に見えなかったら何されるかわからないから」
美咲は「なるほど」と思いながら頷いた。
「だったら、なんで和樹は見れたの?」
「多分、これのおかげだと思う」
リュックから出したのは拓斗のパソコンだった。
「さっき拓斗が見せてくれた時俺が持ったから。やっぱ俺ってすごくない?」
「そんなのんきなこと考えている場合じゃない」
美咲が少し苛立ちながら答えると
「まあまあ、これがあったから和樹君が見られるようになったんだから」
と明菜が焦りながらも落ち着かせた。
「『電気』っていうのはたぶん電化製品だよね」
「じゃあ、まずあと二つくらいは電化製品を探しに行くとするか」
と和樹が気合いを入れた。
「どこで探すの?」
「やっぱりさっきの都市か私たちが住んでいる町じゃないかな?」
「都市のほうが多分、電化製品が多いと思う」
「そうと決まればさっきの場所に戻るとするか」
「だったら、危ないかもしれないけど二手に分かれない?」
「確かに。危ないかもしれなけどその方が効率が上がるもんね」
「じゃあ、時計を持っている人は?」
と和樹が言い、拓斗が手を挙げた。
「そしたら俺の時計を渡しておくよ。俺はパソコンで確認できるし」
拓斗は和樹と美咲は明菜と探索することになった。
神社のあった山から都市に戻ってきた。
さっき崩れた家が見えてきた。
「よし、目的は電化製品を探しだすこと」
「二十分後、またここで集合な」
和樹が言うとみんなが頷いた。
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