誰に祈った?

@katakurayuuki

短編小説 誰に祈った?

最近放課後勉強するから教室使わしてくれって先生に言ったらちゃんとかたずけするならいいぞって言われたので、それからというもの塾に行けない奴や暇な奴。ちょっと勉強についてこれない奴とそれを助けるやつと結構楽しく勉強するようになった。

 ある日のことだ。その日も放課後勉強をし、かたずけを始めたとき、俺は黒板の文字を消すことにしたのだが、気になる文を見つけた。

 『祈るならば手を合わせないといけない』

 見た瞬間、暇な奴がいるもんだと思った。ここにいるのはみんな何かしら勉強をしなくちゃいけないのにラクガキをしている時間があるならそれこそ勉強しろよと思った。


 次の日の事だ。その日もかたずけを始めたときに黒板の文字を消そうとしたら気になる文があった。

 『祈るならば頭を垂れないといけない』

 手を合わせて頭を垂れる。まぁよくある格好だ。特に感想もなく文字を消した。


 次の日の事だ。その日も黒板の文字を消そうとしたら手が止まった。

 『さすれば、そなたの願いを聞き届けよう』

   それは嘘だろ。俺でもわかる。祈っただけで何か願いを叶えてくれるならそんな楽なことはない。そう思い文字を消した。


 次の日の事だ。放課後になり、そろそろ勉強をしようかと思った時、ふと黒板のラクガキの事を思い出した。

 願えば叶う。

 そんなことはない。でも試してみてもいいか。何かが減るもんじゃないし。

 そして俺は両手を合わせ頭を垂れて願った。

 「次の理科の点数上がりますように」

 10秒待ったが。勿論何も起こらなかった。

 まぁそんなもんだよなと思いつつ勉強を始めようとしたら、スピーカーから流れてくる放送部の声がだんだん小さくなっていった。

 いや、違う。みんなが動かなくなっていったのだ。

 

 するといつもラクガキが描いてあるところの黒板にゆっくり文字が浮かび上がってきた。

 『願いは届いた。理科準備室に行ってみろ』


 俺はパニックになりながらもとりあえず理科準備室にまで行ってみた。途中ですれ違うみんなも止まっていたからちょっと怖くなってきていたのだ。


 理科準備室前まできた。いつもかたずけをするときに入るぐらいでほとんど入ることはないこの部屋に何かがある。

 「失礼しまーーす」

 一応ノックしてから開けてみたがなんの反応はなかった。

 開けてみると人の姿はなかった。ただ部屋の真ん中にプリントが置いてあった。

 次のテストに使うプリントだ。

 

 心臓の音が早くなるのを感じた。これは願ったから見ることが出来るのか?俺だけ?


 ふと、プリントを見ようと足を延ばしかけて、止めた。考え直した。

 祈っただけで何か願いを叶えてくれるならそんな楽なことはない。

 これを神さまが聞き入れたから見ることが正解か?いや、待てよ。願いは誰が聞いてくれるのだ?それは善の者?悪の者だってありうるのでは?ではこれからしようとしてることは悪だと感じる事をさせようとしているなら。

 「これは悪魔の仕業?」

 そうつぶやき部屋から去ろうとすると、人体模型がいきなりしゃべりかけてきた。

 「なんだよ、今回の奴は用心深いじゃねえか。いいじゃねーーか見ちゃえばそれがお前の願いなんだろ?テストでいい点とりたいんだろ?なら見ちゃえばいいじゃねえかよ」

 悪魔のささやきならぬ悪魔が勧誘してきた。ただ、もう心が晴れた自分にはもうテストのプリントには興味はなかった。

 「悪いね。俺は勉強してテストを解くために放課後まで残ってるんだよ。放課後テストのプリントを盗み見るためじゃないのさ。」

 「あーーあ。つまんねー。」


 そういう悪魔の声を後ろに残しながら俺は理科準備室のドアを閉めた。

 

 すると放送部の声がまた聞こえ出した。時が動いているのだ。

 非現実的なことを経験した気がする。だけれど、やることは変わらないのだ。


 その日。黒板に描かれた文字を消そうとしたらいつもラクガキが描いてあるところに、

 「きっと後悔するぞ。準備室はいつも開けてあるからな」

 あいつ、暇なんじゃないか?そう思いつつ俺は文字を消した。

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