陽斜

前田陽平

陽斜

バンTの雷の匂い吸い込めば結晶していく十代の夏


朝ぼらけ山の裂け目を埋め尽くす光のシャワーを浴びて覚醒


灼熱に掛ける言葉も見当たらずサックスパート銘々と鳴り


用水路 青葉とともに引き込まれ命よりも灯りをください


大空に囲われ落ちる天の滝 雨と異なる水の生き方


夜のトーン最深の影連れている黒猫に会うこの日のために


30分歩いてきれいな花火見て帰りの散歩は幽霊ばかり


心臓を浮かべたような赤き月降り注がれる生き血の光


緩やかなカーブつんざく霧列車滲む光路に頬が張りつく


長旅の別れの言葉は合ってたか一時間遅れの腕時計

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