第8話 東の最強ヒロインも新技持ってた

 原作では、目的のダンジョンの名をマビトと言った。マビトというのは、いわゆるこのグランドテイルズの世界における魔人族のことを差す。


 要するにこのダンジョン。なにがそんなに危険かというと、魔物の上位存在として設定されている魔人が局所で跋扈ばっこしているという点がその理由になる。


 知性を持つ魔の存在。


 ただ当然、魔人と一言で言っても多種多様ではある。性格も能力差も様々だから一概に等しく危険な存在とは言い切れない。中には人に対して友好的なヤツなんかもいたりするから、逆に接触した時の対処が難しかったりする。


「気を抜くなよ。僕が頭を張るから、ふたりはなるべく僕との距離を詰めて、慎重について来るように」


「「はいっ!」」


「……」


 入口から中へ突入する前に、軽くマビトダンジョン内を安全に進む上での作戦を伝えたら、メアとカナデはともに満面の笑みを浮かべながら息ピッタリで返事をしてきた。


 なんか緊張感ないんですけど、このふたり。

 君たち本当に、このダンジョンの危険度わかってる?


 冒険者ギルドの指定する危険度ランクはSSなんだよ? これ、グランドテイルズの冒険者ベースの話をすれば、上位ランカークラスがまぁまぁ苦戦しないと攻略できないくらいの難易度だよ?


 いや、もちろん下層まで攻略するつもりは毛頭ないよ。


 あくまで目的は僕の理想体型を取り戻すことと、周回によるみんなの効率的レベルアップだけだからね。いくら自分たちの実力がすでにかなりの領域にあると自覚しているとはいえ、僕もそこまで挑戦的な男ではないからね。


 以前も言ったけど、僕はこう見えて保守的なんだよ。


「じゃあ私がアークのすぐ後ろにくっつくから、カナデちゃんは私の後ろをついて来てね」


「え……それ、逆だよメアちゃん。私が、アークくんの後ろ……」


「いや、逆じゃないし」


「いや……逆、だし……」


 どっちでもいいだろ、そんなの。

 もうなにが逆でどっちが正かワケがわからん。


 早く決めてくれ。


 ああ、ちなみになんだけど。

 ここへ来るまでの道中でひとつ驚くべきことがあったので、一言言っておきたい。


 カナデ・アオイが身につけていた新たな能力についてのことだ。


 どうやら彼女、例のあのシャンバラヤでイグナトフになぶられていた時、彼のあの次元魔法をみたいなんだ。


 これは僕の原作知識にはないカナデの能力だったんだけど。彼女の究極奥義には“裏閃”と呼ばれる派生奥義がいくつかあるらしく、その中のひとつに【写閃シャセン】と呼ばれる敵の能力をまるパクリできるチートスキルがあったらしい。


 使用回数に制限があるのと写すのにめちゃくちゃ時間がかかるから毎回使えるワケではないらしいが、あの場面でカナデは「これは使える」と思ったらしく、ダメージを負いながら必死に【写閃】を駆使して次元魔法をコピーしていたんだそうな。


 だからあの劣勢において戦意を失わず、あれだけの手数をもらいながらずっと戦う姿勢を崩さなかったと、さっき初めてその話をされた。いやまぁ、確かに転んでもただでは起きないその精神は素晴らしいと思うよ。


 でもあの場面でそれやられるこっちの身にもなってほしいという釘は差させてもらった。時と場合によるだろう。以後、そういうことは事前相談なしでやらないことってことで話はつけた。頼むよ、ホント。


「僕の後ろにはメア。カナデは最後尾だ。異論は許さん」


「えっ……そんな、アークくん……」


「よっしゃぁ!」


 あまりにも意味のないせめぎ合いを二人がしているものだから、僕がもう勝手に順番を決めた。別にカナデに罰を与えるとかそういうつもりはない。一応理由としては、カナデのほうが強いから一番後ろを警戒してほしいという僕のただの意向だ。


 ああ、ちょっと話が途中になってるな。

 本題はカナデが次元魔法をコピーしていたことじゃない。


 ここまでの移動手段についてだ。

 まぁ前提はもう話したから、すでに察してもらえていると思うが。

 

 要は僕たちはここまで、カナデの次元魔法を使って移動してきたんだ。学園から走っても早くて2時間はかかると思われた移動時間が10分にまで短縮できた。これは素直に助かった。周回に使える時間が格段に増えたから。


 これなら毎日でも来ることが可能。カナデはすでに周回の必須のメンバーとなった。ケガの功名とはよく言ったものだ。シャンバラヤで心配した分のおつりは十分に返ってきたと考えて問題ない。


「よし。では行くぞ」


 隊列を整え、いよいよマビトダンジョンへと突入する僕たち3人。


 人が二人ギリギリ通れるか通れないか程度の幅の入口から中へ……


「きゃあああああ!!」


「!?」


 入ろうと一歩を踏み出した瞬間、洞穴の奥から女性の叫び声が鳴り響いてきた!


「冒険者か!?」


「急ごう、アーク!」


 すでにこの奥で、なにかが起きている!

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