8章『とある出遅れ魔女の欲張った後』

1話「魔女集会(1)」

暗い森の枯れ木が並ぶその奥で。

尖った三角屋根の少し大きな家の前にて。

魔女達の集会が始まっていた。



「こんな風に集まって、お茶会を開けたのは何時ぶりでしたかね。」

そう言ったのはメイド服を着ている若い女。恐らく、魔女でありながらメイドもしているのだろう。名は不毛というようだ。

「さぁ……いつぶりだったかな。」

そう答えたのは悪感の正面に座っている、この集会の参加者達の中で1番小さな肉体を持つ魔女。名は失望というらしい。

「あれ、集会の参加者ってもっといなかったっけ。今回はこれだけ?」

あまりの少なさを疑問に思っているのはまるで猫のような仕草の魔女。名は幻滅というらしい。

…………その様子を見守っているように思える、この静かな魔女の名は孵化。本来なら参加する予定は無かったが、事情が代わり参加する羽目になってしまったそうだ。

「ねぇねぇ、孵化も混ざったらどうなの〜?」

のんびりゆっくりと話すこの眠そうな魔女はイバラと名乗っているらしい。

「う〜ん……数名来てないねぇ。」

そう、1人呟いたのは今回の集会を開いた蛇の魔女。名は妄幻というらしい。


「何人来てないの〜?」

「あと3人くらい……だった気がするねぇ。」

「へ〜。」

軽く雑談という花を咲かせつつ、手元はカチャカチャと音を立てている。

「この紅茶熱いんだけど!?」

「幻滅、それは淹れたてです。」

「貴女の紅茶はこちらのティーポットの中ですよ。」

「あ、そっちかあ。」

幻滅の目の前に置かれたカップに不毛の手によって紅茶が注がれた。

「クッキーはこちらの1番甘いのをどうぞ。」

「………………口直しとかそういう事?」

「まぁ、はい。」

「じゃ、受け取っとくか。」

「………………。」

幻滅は紅茶を注がれたカップを持ち、ゆっくりと飲み始めた。





「ねぇねぇ、孵化。」

「………………はぁ。」

「このカップケーキおいしいよ。」

「………………。」

「お皿の上に置いとくね〜。」

孵化の目の前の皿の上に、可愛らしい見た目のカップケーキときらきらとした変なものが置かれた。

「………………なんですか、このきらきらは。」

「それはね、マカロンについてたお星さまだよ〜。」

「…………マカロンと一緒に置いてくれませんか。」

「…………やっぱり一緒がいいよね〜。」

どのマカロンから取ったっけ、と言いながらイバラはマカロンが置かれている皿を眺めている。





少し…………体感1時間程度が経った頃。

「あっだだだっ……!!」

地面の石に躓きかけ、少し大きな声を出す事になってしまった人物がこちらへとやって来た。

「すみません、遅れました。」

「おぉ……来れたのか。」

「私も無理だと思ってました。けど案外いけるんですね。」

「仕事が終わってすぐに来たのかい。」

「そうなんですよね。なんで1回帰って着替えた方がいいですかね?」

「いや、折角来てくれたんだし。そのままでいい。」

「あ、そうですか。」




「座っちゃいけない椅子ってあったりします?」

「そういうのは無いよ。だから好きな椅子に座りな。」

「じゃあ…………ここにしようかな。」

この人物は妄幻の近くの椅子に座った。

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