3話「菩薩というか首無し死体(2)」

床や壁に貼り付いた血と肉塊。座席へと伸びる触手のようにも見えてしまう程に伸びきった血管。天井から吊り下がる乗客だった人達。

見覚えのある顔私の仲間達もそのうちの1つとなって吊り下げられていた。

惨状とはこの車両の現状の事を表すらしいと、そう紅い乙女は思った。

(一体何があったらこんな事になるのかしらね。)

「だ、誰か……?いるのかしら……??」

一歩進めば、床に貼り付いた肉塊がぬちょ、と音を立てて飛び散りヒールの裏に貼り付く。

「うわっ……?」

「…………あら。」

靴の先に硬いものが当たって驚いたが、よく見るとそれは黄色の乙女の頭である事を知った。

そういう事ならと、私はその場に屈んでそれを胸元に抱えた。

「貴女の頭だけでも持って帰らせて頂戴ね……。」

そう呟くと同時に頭上から視線を感じた。




「……誰よ。」

「……。」

「何も言わないなら私から見るわよ。」

そう言うと視線は感じなくなった。

私はそれを気にせずにそのまま立ち上がる。

「…………いなく……なったのかしら。」

もう、ここに用はない気がする。なので次の車両へと移る事にした。







(別の車両に来たけど…………状況は変わらないみたいね。)

(ここはさっきとは違って、かなり前からこの状態だったみたい。)

「うぅ〜ん……やっぱり足元はぬちょぬちょしてるのね……。」

(ドレスが汚れるかもしれないわね……。)

ドレスの中に手を入れ、レッグホルスターからナイフを取り出す。

(もう、切っちゃいましょうか。)

ドレスを膝の下のところで切った。



「…………あの子の気持ち、分からない訳ではないのよね。」

布になったそれで長い髪を纏めながらそう考える。

「だって、私でも息苦しいもの。あの子がそう思ってない訳がないわ。」

「貴方は環境そのものに敏感だったもの。」

髪を纏め終え、通路側を向く。

「………………待たせたわね。」




「深紅の猟師________!」

目の前に、私が所属している組織童話同盟から逃げた彼を捉えた。







その頃の同時刻。

「…………騒がしい。」

「とてもとても騒がしい。」

「………………あぁ、一曲奏でればこの騒がしさも消えてくれるか。」

「…………騒がしさ、は一曲奏でてもどうにもならないんじゃないかなぁ。」

「……誰です。」

「この汽車の人だよ。」

「……そうですか。」

「………………あぁ、貴方も煩い音の1つようです。」

「そう?騒音奏でそうなのは君の方なんだけどね!」







「………………強そうだと思ってたんだけど、なんかすぐに死んじゃったな。」

砕けた肉体を踏み潰し、【警告】は車掌室へと歩いて行く。

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