ひとりごと

「ねえ、今日は何食べようか？」

「うーん、どうしよう……カレーかな？」

「カレーか、いいね」

「でも、昨日もカレーだったんだよね」

「そうだっけ？あ、そっか、残り物食べたんだ」

「そうそう、微妙に残ってたやつ」

「じゃあ、パスタにする？」

「パスタか……トマトソースかな」

「うん、トマトソース」

「チーズもあるしね」

「チーズかける？たっぷり？」

「うん、たっぷりで」

「そういえば、洗濯物干した？」

「うん、干した……かな」

「干した……？いや、まだだったかも」

「え、どっちだっけ？」

「どっちだろう……」

「お昼寝してた？」

「してた……気がする」

「気がする……？いや、してなかったかも」

「え、してたと思ったけど」

「でも、誰かいる？」

「誰か……？」

「いや、声……聞こえた気がしただけ」

「声……？誰もいないよね」

「そう……ここにいるのは……私だけ……」

「私だけ……うん、そうだね」

「歯、磨いた？」

「うん、磨いた……よね？」

「よね……？いや、まだだったかも」

「え、どっちだっけ？」

「どっちでもいいか」

「そうだね……あ、でも顔洗った？」

「洗った……気がする」

「気がする……？いや、洗ってないかも」

「え、でも触った感覚は……」

「うん、そうだったかも」

「髪、結んだ？」

「結んだ……よね」

「よね……？うーん、気のせいかも」

「気のせい……かも……」

「テレビ、つけた？」

「つけた……かな」

「何観た？」

「えっと……ニュース……だったと思う」

「ニュースか……誰か出てた？」

「誰か……いや、一人だった」

「一人？」

「うん……画面の中の一人」

「ふーん、そうなんだ」

「でも、なんで声が聞こえた気がしたんだろう」

「声……？」

「さっきから、どこかから声がする気がする」

「気のせい……気のせいだよね」

「うん……気のせい……」

「郵便物……届いた？」

「届いた……かな」

「何か面白いのあった？」

「面白い……？うーん、ないかも」

「じゃあ、メールとか？」

「メール……あ、来てた……」

「誰から？」

「えっと……私からだった」

「え？」

「……自分で送ったみたい」

「自分……？」

「うん、自分に」

「そうか……」

「……そうだね」

「ねえ、外の音、聞こえる？」

「聞こえる……風かな？」

「風……？いや、違うかも」

「違う……何か、足音……？」

「足音……え？」

「……いや、気のせい」

「気のせい……うん、気のせい」

「でも、誰もいない……よね？」

「うん、ここにいるのは……私だけ……」

「私だけ……やっぱりそうか……」

「ずっと話してたのは……私だけ」

「一人で……ずっと話してた」

「ふふ……面白いね」

「うん、面白い……」

「そういえば、冷蔵庫開けた？」

「開けた……かな」

「何かあった？」

「牛乳……あと卵」

「卵か……割ってないよね？」

「割ってない……よね？」

「よね……あれ、どっちだっけ？」

「わからない……もう数えなくてもいいかも」

「そうだね……あ、ゴミ捨てた？」

「捨てた……気がする」

「気がする……？いや、まだかも」

「どっちでもいいか……」

「うん、どっちでもいい」

「今日の天気、どうだった？」

「晴れ……？曇り……？うーん、よくわからない」

「でも、空見たよね？」

「見た……かな」

「見た……いや、見てないかも」

「まあ、どっちでもいい」

「そうだね」

「ねえ、時計見た？」

「見た……気がする」

「何時だった？」

「えっと……多分3時」

「3時……？いや、4時かも」

「どっちでもいい……」

「うん、どっちでもいい」

「本読んだ？」

「読んだ……かな」

「何の本？」

「えっと……あ、漫画だった」

「漫画か……面白かった？」

「面白かった……かな」

「かな……？いや、普通かも」

「普通……うん、普通」

「ねえ、今日は誰か来た？」

「来た……？」

「いや、誰も来てない……よね」

「来てない……うん」

「でも、話してた？」

「話してた……ずっと……」

「一人で？」

「うん……一人で」

「ずっと、一人で……」

「ふふ……面白いね」

「面白い……」

「……独り言、ずっと続けてる」

「ずっと……続けてる……」

「私だけ……やっぱり、私だけ……」

「声……声……」

「誰もいない……でも、ずっと話してる……」

「ひとり……ひとり……」

「……ふふ、独り………………………………か。」