豪華すぎトイレにはご用心
キックミラキス
音楽教室にて
ぼくは音楽教室でピアノのレッスンを受けている。
何度も何度も、この3小節を繰り返し練習させられているんだ。
先生に「ちゃんと弾いてきた?」って、無表情で聞かれたのを思い出した。今日教室に着いて、最初に弾いた直後に聞かれたんだ。
「ちゃんと…弾いてきた」
自信なさげに答えちゃった。
もちろん、先週のレッスンから今日まで、ぜんぜん弾いてない。だって、毎日友だちとサッカーで、あんなに忙しかったんだから、仕方ないじゃん!
隣で見ている先生の、不機嫌そうな空気がビンビン伝わってくる。
ああ…さっきからトイレに行きたくて、たまらない!
でも、先生の雰囲気を考えると、「トイレ!」って言い出せない。
もう小学3年生だ。おもらししたくない。ああ、こまったぞ。
ふと、レッスン室のドアの窓の外を見ると、同じクラスの茉奈ちゃんが見えた。この部屋にぼくがいること、気づいてるかな?
茉奈ちゃんはものすごく上手で、同い年なのに、本当にむずかしい曲に進んでいる。ショパンの『ノクターン』とかいうんだって。
おっと、気を抜くと出ちゃいそうだ。集中、集中、おしっこがまんに!
なんとかレッスンが終わり、先生が楽譜に翌週までの課題を赤ペンで書きこんでくれている間も、ぼくは体をくねくねさせて、必死でがまんしていた。先生、お願い、早く早く!
「では、さようなら。来週はちゃんと練習してきてね」
先生の言葉で解放されたぼくは、一目さんにレッスンルームを飛び出した。
廊下には茉奈ちゃんがいる!お願いだから、今はまだ出ないでくれー!ぼくは神様にお願いするように頭の中で唱えながら、トイレへダッシュ。やばい。心臓がドキドキバクバクしている。これ、もうすぐおもらしになるやつだ!トイレに入り、うしろ手でドアをしめる。
よかったー!もらすところを、あこがれの茉奈ちゃんに見られたりしたら、人生、おしまいだった。おもらしせずにここまでたどりつけたことに、ひと安心した。
音楽教室のトイレは、ひろかった。
なんだこのトイレ?
こまった。早くしないともうもれちゃう。外には茉奈ちゃんがいる。ドアのカギ、しめたっけ?いや、しめてない。だって、男の子のおしっこ用の便器があると思っていたんだもん。
でも、今からドアまで戻れない。それより早くしよう。もし茉奈ちゃんが入ってきたときに、
見ると、このひろい空間のまん中に、
どうやら、このイスが便器みたいだ。
見てみると、4本のあしは金色で、ライオンの足みたいな
今は見た目なんてどうでもいい。もうダメだ。でも、どう見てもイスだ。
どう使うんだろう?
洋式のように使うんじゃなさそうだ。
そうだ。これに座ってて利用するにちがいない。
立って使えないけど、ほかにないんだもの。
便器みたいにあながあいてないけど、たぶんおしっこしたら全部すいこまれていくんだ。ぜったいそうだよ。
…瞬間的にたくさんのことを考え、なっとくしてぼくはズボンとパンツをおろし、玉座に座った。
目の前にドアが見える。
ドアのカギがあいたままだから、おしっこ中にだれか入ってきたら大変だ。
ぼくは足をとじて、だれか入ってきても大事なところが見られないようにかくした。
と同時に、ほとばしりでる!
すわって「さあ、はじめよう」って感じの出方じゃない。もしズボンとパンツをおろしてなくても、出ていたにちがいない。
ああ。よかった。
でも、全然おしっこはすいこまれず、ぼくのお尻の下にどんどんたまっていく。
おもっていたトイレとちがうけど、今はとにかく早くおわらせよう。
ふぅ。
がまんにがまんをかさねたおしっこが出おわると、ぼくにはようやくまわりを見わたせる余裕が出てきた。
そういえば、今までここのトイレを使ったことがなかったな。なんでこんなに広いんだ。
足もとに目をおとすと、床は白いいしだ。これってアニメでよく見る大理石の床だろうか、とにかく
それに、この豪華な玉座を便器にしてるなんて、夢のようなトイレだな。
あれ?なんだよ、ここに入ってきたときは気づかなかったけど、こっちむきに目をやったら、ちゃんと便器と、小便器があるじゃないか!なんで今まで気がつかなかったんだろう。おかしいな、こっちも見たはずなのに、見たときはなかったはずだ。
でも、ということはこのイスはトイレじゃなかったんだ。
あの小便器でおしっこしないといけなかったんじゃないか。
でも、出してしまったおしっこが、お尻のまわりだけでなく、今やもものほうや背中のほうに広がっている感覚がある。
これはヤバいぞ。この玉座は便器じゃなく、トイレをまつ人ようの待ち合わせ席にちがいない。
しまった、ここにおしっこしたことがバレないようにしないと。
見つかる前ににげないと。
…ぼくは立ちあがり、パンツとズボンをはいた。ふりかえって玉座を見ると、まんなかがくぼんで、おしっこがなみなみとたまって、池のようになっていた。
ぼくは真っ蒼になった。
これは確実におこられる。
早くにげないと。でも、もし今に茉奈ちゃんが入ってきたら、なんて言おう。そうだ、
「ぼくが入る前から、こうなっていたよ」
これだ!ぼくはレッスンバッグをつかんで、トイレのドアをそーっとあけた。
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